ソトガケ海外経験糧にさらに飛躍へ
2023年12月27日 10:30
競馬
BCクラシックでは日本調教馬として初連対。勝ち馬ホワイトアバリオから1馬身差に食い下がる力走で、歴史の扉に手をかけた。ただ、2着に好走した満足感よりも悔しさの方がにじみ出る。「よくやったとは思うけど、ドバイ(UAEダービー)で強い勝ち方をしていた。その強さを思えば物足りない。BCは休み明け。もっと強い馬だから」と振り返る。
UAEダービーは海外初戦のサウジダービー3着からの臨戦で、2着ドゥラエレーデに5馬身半差の圧勝。好発を決めてハナを奪い、直線で突き放した。「サウジアラビアの時は輸送時間が長かったし、着いてから10日くらいで競馬。ドバイはサウジから直接行って現地での調整期間もあったから」と勝因を挙げた。UAEダービーで結果を出したことで、勇躍ケンタッキーダービー(6着)へ。「最初からケンタッキーダービーを目標にしていたわけじゃなかったけど、ドバイで結果が出たので。ケンタッキーダービーは雰囲気も凄い。お祭りだった」。転戦が続く厳しいローテでの果敢な挑戦だった。
あの経験が秋につながった。担当の瀬川助手は「米国って対面での調教が多いんです。常歩(なみあし)は外で調教馬を見ながら進めていくんですけど、日本にはないので戸惑っていました。でも2回目は慣れていましたね」と春との違いを感じたという。フィジカル面についても「見た目に成長していました。現地の方もよく見ていて、春は“Look nice”だったんですけど、秋は“Look great”って言われました」と目を細めた。そして何より強調するのは日本の他陣営、現地スタッフのサポートだ。「BCの時はウシュバテソーロに助けてもらいました。美浦から成田に向かう馬運車、サンタアニタでの馬房、調教も一緒にやらせてもらったり。サウジやドバイでも周りの年長馬の存在が大きかったです」と感謝する。
BCクラシック2着馬として来年はこれまで以上に注目される。音無師は「僕もあと1年で終わり(25年2月末に定年引退)だけど今年はいろいろ経験を積めた。来年が楽しみだし、何とか頑張ってほしい」と結んだ。トレーナー、厩舎スタッフの挑戦への意欲は高まっている。
◇音無 秀孝(おとなし・ひでたか)1954年(昭29)6月10日生まれ、宮崎県出身の69歳。79年騎手デビュー、ノアノハコブネとのコンビで85年オークス制覇、93年引退。栗東・田中章博厩舎の調教助手を経て95年に調教師免許を取得し開業。06年高松宮記念(オレハマッテルゼ)でG1初制覇。JRA通算8314戦967勝、うち重賞86勝。
◇坂田 高浩(さかた・たかひろ)1984年(昭59)11月5日生まれ、三重県出身の39歳。07年入社で09年4月~16年3月まで中央競馬担当。その後6年半、写真映像部で経験を積み、昨年10月から再び競馬担当に。