メッシのすごさが分かるアルゼンチンの特異なやり方
2014年07月03日 13:17
サッカー
決勝トーナメント1回戦は延長が多く、きっ抗した試合が続いている。準々決勝に勝ち残ったのは1次リーグ首位の国ばかりで、結果的には「順当」ということになる。アルゼンチンは7月1日の試合でスイスに苦戦したが、延長後半13分にメッシのパスをディマリアが決めて1-0で辛勝した。1次リーグは4-3-3で戦っていたが、この試合は4-2-3-1にし、メッシをトップ下に置いた。
メッシがやりやすいシフトで、守備に戻ることもなく、自陣ペナルティーエリア内に入ったのは1~2度しかなかったと思う。しかし、アルゼンチンは堅守速攻型で、前線の選手3~4人で攻めることが多いが、皆足下でボールを貰いたがるタイプで相手のDFラインの裏に入り込む攻め方はあまりしない。前半はアルゼンチンがボール保持率60%だったが、オフサイドは両チーム0で、DFラインの背後を取れなかったことを証明している。当然、決定機も少なかった。
メッシは90分間で10キロ走っていない。スイスの同じ位置のメーメデイは約12キロ走っており、2キロ以上の差がある。それだけ運動量に差があるとふつうは負けるが、それだけメッシはすごいということだ。普通のチームは全員が走らないと戦えない。アルゼンチンのやり方は特異で、それだけメッシを生かし、この大会で勝つために割り切っている。
スイスはアルゼンチンにカウンター攻撃をさせないような守備をしていた。メッシを注意し、守備のバランスに気遣うあまり攻撃の枚数が少なくなった。勝ちに行くなら、どこかでリスクを負って攻めることも必要だった。そういう中で1つのミスから失点したが、「何とかPK戦に持って行って」というゲームプランが崩れてしまった。やはり120分間ノーミスは難しい。どこかでリスクを追って攻めることが必要だった。ただ、ロンドン五輪に出場した選手が6人含まれていた。09年のU-17世界大会で優勝したメンバーも多く、その時代から一緒にやっている選手が多い。その年代の強化が大きなウエートを持つということでもある。(小倉勉=ヴァンフォーレ甲府コーチ、元日本代表コーチ)
◆小倉勉(おぐら・つとむ)1966年(昭41)7月18日生まれ、大阪府出身の47歳。天理大卒業後に渡独し、ブレーメンのユースなどを指導。帰国後、92年から市原(現J2千葉)で育成部やトップチームのコーチ、強化スタッフなどを歴任した。06年からイビチャ・オシム監督、08年からは岡田武史監督の下で日本代表コーチを務め、10年W杯南アフリカ大会で16強入り。12年ロンドン五輪では関塚隆監督の下でコーチを務めて4強入りを支えた。五輪後の12年9月からJ1大宮でコーチ、テクニカルダイレクターを務め、13年8月から監督。14年からJ1甲府でヘッドコーチを務めている。
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