伊の名将マンドルリーニ氏 J視察で日本の虜、成長へ改善点も語る
2017年08月15日 08:00
サッカー
マンドルリーニ氏は、イタリアではサッカー界はもちろん、誰もがその名を知る著名人。現役時代はDFとしてセリエA通算291試合出場を誇り、主に84〜91年シーズンまで7季に渡ってプレーしたインテル・ミラノで活躍。元西ドイツ代表のMFマテウス、FWクリンスマン、DFブレーメのドイツ人トリオらとともにプレーし、88〜89年シーズンにはリーグ優勝、90〜91年シーズンにはUEFA杯(欧州リーグの前身)を制覇した輝かしい経歴の持ち主だ。
93年に現役を引退したあとは、監督としてのキャリアをスタート。セリエCで徐々に経験を積み、セリエAではアタランタ、シエナなどの指揮官を歴任。09〜10年シーズンに就任したルーマニア1部のクルジュでは、同国では外国人監督として初のリーグ制覇を果たしたほか、国内杯、同国スーパー杯も制し3冠を達成した。
指揮官としてもっとも手腕を発揮したのは、10〜11年シーズン途中から就任したベローナ。かつて84〜85年シーズンにリーグ優勝を果たした古豪も、当時はセリエDに低迷。だが、マンドルリーニ氏は連続無敗記録など数々の記録を打ち立てながら、就任わずか3シーズンでチームをセリエA昇格へと導いた。監督交代が頻繁なイタリアにおいて、ひとりの監督が同一チームを7シーズンに渡り指揮するのは稀。同氏の評価の高さの表れと言える。
ただ、現在はフリーの身。そのつかの間の休暇を生かして、視察をかねて訪れたのが以前から興味のあった日本だった。しかも、その裏には日本サッカーにもつながりの深いある人物からの薦めもあったという。「親交のあるザックから興味あるのだったら、ぜひ一回、行ってみれば良いんじゃないかと言われた」。ザックとは、もちろん元日本代表監督のザッケローニ氏。互いの故郷が近いこともあり、以前から親交が深かったという両氏だが、日本を愛して止まないザッケローニ氏からの推薦ということもあり、マンドルリーニ氏も日本の虜になるのは、自然の流れだったかもしれない。
マンドルリーニ氏は約10日間の滞在で、5日の浦和―大宮戦を皮切りに、9日の神戸―鹿島戦、13日のFC東京―神戸などJ1を3試合、名古屋などJ2の2試合の計5試合を視察。まず大きな感銘を受けたのが、Jリーグを取り巻く環境面だった。「スタジアムはどこも素晴らしい。そしてファンも家族連れが多いし、みんな笑顔でサッカー観戦を楽しんでいる。すべてにおいて想像以上だった。日本には、サッカーが発展するベースがすべて整っている」。
もちろん、日本人選手のレベルの高さにも驚いた。「選手はみな技術がしっかりしている」。埼玉ダービーに出場した元浦和MFの関根が、その後にドイツ2部インゴルシュタッドに移籍したことを伝え聞くと「実際に良い選手だった。彼だったら、イタリアでもプレーできると思う」と評価した。その他では、「常に裏を狙っている」と指摘した鹿島のFW金崎、「DFラインからしっかり攻撃の組み立てが出来ている」という同じ鹿島のFW金崎、DF植田、昌子らからも好印象を受けたようだ。
その一方で、マンドルリーニ氏は改善点も口にした。「90分を通して、あまりリズムの変化が感じられなかった」と指摘。ザッケローニ氏も日本代表指揮官時代に何度も口にしたインテンシティー(強度の高い)という言葉を何度も用い「ゴールから20〜30メートル付近で、ゴールに直結するようなインテンシティーの高いプレー、迫力のあるプレー、縦に速いプレーをもっと増やせばもっと良くなる」と強調した。そして「これは練習で改善できるもの。そういうプレーを練習からやっていけば、日本人は技術の高い選手が多いから、必ず試合の中でも出せると思う」と続けた。
ザッケローニ氏同様、戦術家として知られるマンドルリーニ氏。自らが好んで用いるシステムは「もっともバランスが良い」という4―3―3。そのシステムで、過去に指揮したチームでは元イタリア代表FWルカ・トーニら数々の得点王を生み出すなど、攻撃サッカーを標ぼうする監督としても知られる。戦術の話になると、おもむろにペンとメモと取り出し、会話も自然と熱を帯びた。
監督のキャリアをスタートして以来、約20年近くノンストップで指揮官を務めてきたマンドルリーニ氏だが、現在はフリー。かねて海外での指導に興味を持っており、「チャンスがあればぜひ日本で指導してみたい」と近い将来での日本での指揮にも強い意欲を示した。
◆アンドレア・マンドルリーニ 1960年(昭35)7月17日生まれ、エミリア・ロマーニャ州・ラベンナ出身の57歳。現役時代はDFで主に7シーズン所属したインテル・ミラノで活躍。名将トラパットーニ監督のもと88〜89年シーズンにリーグ優勝、90〜91年シーズンにUEFA杯(欧州リーグの前身)を制覇。93年に現役を引退し監督のキャリアをスタート。古豪・ベローナなどで手腕を発揮した。09〜10シーズンに率いたルーマニアのクルジュではリーグ、国内杯、スーパー杯の3冠を達成。
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