苦しみながらも残留決めた磐田 J1参入プレーオフでの経験は今後の財産に

2018年12月11日 14:51

サッカー

苦しみながらも残留決めた磐田 J1参入プレーオフでの経験は今後の財産に
<J1参入プレーオフ 磐田・東京V>前半、PKでゴールを決めた磐田・小川(中)は喜ぶ(撮影・西海健太郎) Photo By スポニチ
 磐田が、J2リーグ6位から下克上で勝ち上がった東京VとのJ1参入プレーオフを制し、苦しみながらも来季J1残留を決めた。終わってみればJ1の底力を見せた磐田の完勝だったが、試合後の会見で名波監督の口から飛び出した「負けていたら間違いなく辞めるつもりだった」というコメントからも、磐田にとってどれだけの重圧がかかっていた一戦だったかは想像に難くない。
 気迫あふれる両チームの激突は見応えたっぷりだったが、中でも驚かされたのが磐田の開始からの攻撃的な姿勢。チームは今季リーグ最終戦の1日の川崎F戦で、残り30秒で決勝点を奪われ16位に転落。J1参入プレーオフに向けて再開した4日の練習では、何とも言えない重い空気が漂っていたという。一方、大宮、横浜FC戦をともに劇的な勝ち方で勝ち上がってきた東京Vは、文字通り勢いに乗っていた。両チームの状況を考慮すれば、東京Vの下克上ミッション完遂を予想したものも、少なくなかったのではないだろうか。

 ところがフタを開けたらその予想はすぐに覆された。名波監督が「どれぐらい自分たちがアグレッシブにできるか」と送り出した一戦。開始19秒で、指揮官の望んだ姿勢が早くも体現された。東京Vのキーププレーヤー、佐藤が左サイドでボールを持つと、田口が素早い寄せで潰した。結果的にファウルとなったが、個人的にはこの何気ないワンプレーがその後の試合の流れを大きく変えたと感じた。

 名波監督はこの一戦に向け練習を4日間連続の完全非公開で調整。どのような「名波マジック」を使い、川崎F戦でどん底まで落とされたチームを再び戦闘集団へとまとめ上げたかは知る由はない。ただ、短期間でチームを立て直したその手腕は大きく賞賛されるべきもので、そのプロセスは名波監督にとっても今後の大きな財産となるに違いない。

 スタジアム出発前のクラブハウスでは、百戦錬磨の中村俊輔も一役買った。自らの発案で、名波監督の了承のもと選手ミーティングを敢行。ジョークも交えた中村流でチームにハッパをかけた。ケガに泣かされた今季。東京V戦でも足首には痛み止めが打たれ、テーピングでガチガチに固められていたという。まさに満身創痍。先発を外れ、出場は結局、後半アディショナルタイムのみだったが、どんな形であれ、何とかチームの役に立ちたいと知恵を絞ったのだろう。

 選手ミーティングでふと思い出したのが、中村も所属した横浜が優勝争いを繰り広げた2013年シーズン。勝てば9年ぶりの優勝に王手となっていた11月23日のアウェー磐田戦に向けて鹿島で3連覇を経験したFWマルキーニョスが動いた。アウェーの宿舎で選手ミーティングを提案。チームメートに熱く訴えかけた。そのときに中村から聞かされた言葉は、今でもはっきりと覚えている。「マルキは勝ち方を知っている」。

 試合は、横浜が中村の決勝アシストで勝利。優勝に王手を懸けた。その後2連敗でまさかのV逸となったものの、あのときのマルキーニョスの姿は、中村はもちろん、当時の所属した選手たちの脳裏に今もしっかりと焼き付いているに違いない。

 東京V戦後、磐田の多くの選手は「やる必要のないゲームだった」と言っていた。当然、すんなり残留を決めるにこしたことはなかっただろう。それでも、FW荒木が「あれだけの選手がみんなの前で発言してくれた」と振り返った中村発案の選手ミーティングなど、逆にクラブにとって今後の財産となるだろう経験も多かったはず。翌日に明らかとなった名波監督の続投。来年はよりたくましくなった磐田がピッチ上で見られるかもしれない。(垣内 一之)

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