元なでしこエース永里優季、世界も驚く“男子チーム移籍”「女の子に一つの選択肢を」
2020年09月11日 05:30
サッカー
異例の決断に至った背景には、新型コロナウイルス感染拡大の影響があった。今季のNWSLはコロナ禍のため短期開催となり、7月に終了。以降のスケジュールは未確定で、「そういった状況に疲れてしまった。自分がモチベートされる環境に行ってみたかった」という。「昔から男子のチーム、リーグでプレーしたい思いがあった」ため「はやぶさイレブン」に所属する兄・源気に相談。兄は「フィジカルの部分で難しさはあるかもしれないが、永里優季なら男子チームでもプレーできるのではと思った」とクラブ関係者に報告し、異例の挑戦につながった。
アスリートとしての社会的価値を高める挑戦でもある。刺激となったのが、米国代表FWミーガン・ラピノーだ。かねて男女米国代表の賃金格差を訴えるなど、女性の地位向上のために尽力する姿を目の当たりにし「彼女の姿を見て、私も社会に価値を与えられるアスリートにならないと、と思った」。サッカー界の反響は大きく、欧州サッカー連盟(UEFA)の女子チャンピオンズリーグ公式ツイッターは「歴史に残るレンタル移籍」と伝えた。社会的関心を集める中、永里は「男性のチームで女性も活躍、挑戦できるというメッセージになれば」と訴えた。
プロ契約の女子選手が男子の社会人チームでプレーするのは初めてだという。契約期間は今年末までの約4カ月間。
「女の子で男の子に交ざってサッカーをやっている子の一つの選択肢をつくってあげられるかな」
子供の頃に抱いたあの夢に向かって。なでしこの未来も背負って、永里が重たい扉を開いた。
《デビューは10月以降》神奈川県社会人リーグ大会要項には性別に関する規定はなく、女性でも選手登録は可能。はやぶさイレブンの今季初戦は20日だが、永里の出場は登録期間の関係上、10月以降となる。日本サッカー協会によると10日現在、年齢制限のないカテゴリーとなる第1種には、全国で36人(永里を除く)の女子選手が登録されている。Jリーグも選手登録に関して性別の制限はない。
▽はやぶさイレブン 神奈川県でスポーツクラブを展開するSCDのJリーグ参入プロジェクトとして19年に発足。神奈川県リーグ3部に参入し、今季は2部に昇格した。今年2月に元日本代表FW永井雄一郎=写真=が加入。監督は鹿島、浦和、仙台、新潟などでプレーした阿部敏之氏。永里の妹・亜紗乃は同クラブでサッカーとゴルフを融合させたフットゴルフチームに所属している。
◆永里 優季(ながさと・ゆうき)1987年(昭62)7月15日生まれ、神奈川県厚木市出身の33歳。日テレメニーナから01年日テレ入り。10年にポツダム(ドイツ)に移籍し、同年の欧州女子CL優勝に貢献。チェルシー(イングランド)、ウォルフスブルク(ドイツ)、フランクフルト(ドイツ)を経て17年にレッドスターズ加入。日本代表では04年4月のアテネ五輪アジア予選タイ戦でデビュー。07、11、15年W杯出場。08、12年五輪出場。国際Aマッチ通算132試合58得点。1メートル68、60キロ。利き足は右。
おすすめテーマ
2020年09月11日のニュース
特集
サッカーのランキング
-
佐々木則夫氏、男子チーム移籍の永里「技術、判断力は十分に通用する」
-
日本サッカー協会 コロナ禍直撃で49億円収入減…20年度修正予算は赤字11億円
-
“FKの名手”木村和司氏、日韓W杯16強入り貢献トルシエ氏が日本サッカー殿堂入り
-
ACL日程再編 11月15日から再開、決勝は12月19日に変更
-
浦和FW武藤“不敗神話弾”継続に意欲!札幌率いる恩師に「いいプレーを見せたい」
-
FC東京 新人DF木村を健太監督評価「落ち着いて試合に入ってくれた」
-
鹿島DF常本 ウッチーの穴埋める!プロ初陣へ気合「強い気持ちで挑んでいきたい」
-
スペイン1部リーグ12日開幕!いきなり久保VS岡崎 注目の日本代表対決が実現へ
-
メッシ 視覚障がい者の生活を“アシスト” 自身初福祉関連のアンバサダー就任