【レジェンズ・アイ】中村俊輔氏が決勝を分析 守備強固フランス有利も…メッシ最後の栄冠見たい
2022年12月17日 05:30
サッカー
では、互いの強みは何か。まずは60年ぶり3カ国目の連覇へ順当に勝ち進んできたフランス。
「やっぱりチームがW杯仕様になっている。準決勝のモロッコ戦も、先制した後、ここは耐える時間、ボールを持たせてもいい時間と、失点しないことを一番の目的にしっかり守っていた。フランスはそういう粘り強い守備もできる。6試合戦って一度も複数失点していない。恐ろしい」
得点王も視野に入れるエースのエムバペを中心とした強力な攻撃陣に目がいきがちだが、俊輔氏は強固な守備陣も強さの秘密だと分析した。
「特に2ボランチ(チュアメニ、フォファナ)、センターバック(CB)2人(バラン、コナテ)のラインは凄い。モロッコにサイドを崩されて、GKとCBの間、またはCBとボランチの間に斜めのボールを入れられても、全く隙がなかった。シュートを決められないし、そもそもシュートシーンにまで至らない」
モロッコ戦では、王者らしい臨機応変な対応も目を引いたという。
「左サイドを何回も崩されていた。そうしたら、グリーズマンがベンチに何かを言って、そのあとデシャン監督が動いた。(1トップの)ジルーを下げて、(左FWの)エムバペを真ん中に移し、左にチュラムを入れた。エムバペがあまり守備をしないから、堅くいったんだと思う。それで守備を安定させたら、2点目も入った。そうやって監督も含めて、柔軟にやっているんだなと感じた」
アルゼンチンは果たして、フランスの堅守を攻略できるのか。鍵を握るのはやはりメッシという。
「メッシはだいたい、チームが後ろでボールを外回ししているときに、(味方の)2ボランチの前でボールを受けにくる。それで前を向いて、相手のボランチと1対1を仕掛けて、最終ラインにいるFWにパスをして、もう一回もらうことが多い。ただそのリズムが良くなかったり、なかなか崩せなかったりすると、(攻撃が)一辺倒になる。アルゼンチンが負ける時はそんなパターンが多い。それが少し怖い」
まず懸念を口にした。一方で、今のアルゼンチンは「メッシがいる代表で史上最強」と、期待が不安を上回っているという。
「今のアルゼンチンって、形があんまりないというか、メッシ以外の選手も局面を打開できる。その分、メッシも以前ほど引かなくていい。今のチームはメッシだけじゃないし、周りの選手もメッシを使うタイミングを分かっている。メッシが代表初タイトルを獲った去年の南米選手権も、ブラジルを破って優勝した。そこから全員で強くなっている。方向性があって、みんなで団結したときのパワーは凄い。サポーターの声援も凄いし、フランスをも打ち破るんじゃないかなという期待はある」
メッシは世界中のファンの期待に応えることができるのか。それとも――。「評判通り、フランスがちょっと強いかな。ただ、メッシがこれだけ長く世界を魅了して、W杯だけ獲れていない。代表引退を表明したり、前々回のW杯決勝で負けたり、“アルゼンチンでは輝けない”と言われ続けてきた。その中でこれだけ長くやってきたから、やっぱり最後はメッシがW杯を掲げているシーンを見たい。全世界の人もそう思っていると思う。フランスは一発があるけど、個人的にはアルゼンチンに勝ってほしい」。現地で生観戦する俊輔氏は自らの希望も含めそう締めくくった。
◇中村 俊輔(なかむら・しゅんすけ)1978年(昭53)6月24日生まれ、横浜市出身の44歳。97年に桐光学園から横浜M(当時)入り。02年7月にレジーナ(イタリア)移籍。05年7月に移籍したセルティック(スコットランド)で数々のタイトルを獲得。09年6月にエスパニョール(スペイン)に移籍し、10年2月に横浜復帰。17年から磐田でプレーし、19年7月にJ2横浜FCに加入した。00、13年にJ1でMVP。日本代表は98試合24得点。W杯は06、10年に2度出場した。1メートル78、71キロ。利き足は左。
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