海老沼3連覇 日本男子5人目!内股さく裂、康生監督に並ぶ
2014年08月27日 05:30
柔道
男子66キロ級の海老沼匡(24=パーク24)が日本男子史上5人目となる世界選手権3連覇を達成した。決勝は地元ロシアのミハイル・プリャエフに開始1分52秒、内股がさく裂。今大会の日本男子初の金メダルを、鮮やかな一本勝ちでもたらした。同階級に初出場した高市賢悟(21=東海大)は準決勝、3位決定戦で連敗してメダルを逃した。また、女子52キロ級の橋本優貴(25=コマツ)も準々決勝と敗者復活戦で連続一本負けし、昨年の銅メダルに続く2大会連続表彰台はならなかった。
ロシア選手を応援する完全アウェーの会場が一瞬、静寂に包まれた。決勝、開始1分52秒だ。「作戦というか、あの形を狙っていた」というチャンスに、左の内股が一閃(いっせん)すると、完全に宙に舞ったプリャエフの体は畳に叩きつけられていた。前日の60キロ級で高藤が不可解な判定で敗れ「高藤選手でも負けることがある、ということは頭にあった」と振り返った。疑惑の入り込む余地のない一本だった。
「もっとキレイな一本で勝ちたかった」と汗を拭ったが、負傷しながら大逆転を演じた昨年の決勝に勝るとも劣らない勝ち上がりだった。特に、09年の60キロ級王者で昨年も3位に入った実力者ザンタラヤとの準々決勝。何度も相手を宙に浮かせながらノーポイントが続く嫌な展開にも粘り強く戦い、延長で攻め続け指導の差で退けた。相手が組み合わなかった準決勝も、一方的に攻めて指導を引き出した。
今年4月の全日本選抜選手権では高市に準決勝で敗北。ストイックに柔道を突き詰めてきた男が、どこかで行き詰まりも感じていた。そんなとき井上康生監督に勧められたのが、フランスへの単身留学だった。約3週間、言葉が通じない場所で必死の生活。フランス選手が練習を楽しむ姿勢に、柔道が楽しかった原点に回帰した。その一方で「日本が一番キツイ練習をしている。だから負けたくないというか、負けられない」と選手としての闘志も呼び覚まされた。
数多くの世界王者を輩出してきた日本だが、男子で3連覇以上を達成したのは井上康生監督ら過去4人だけ。「率直にうれしいです」。その存在は早くも伝説の域に達しようとしている。「優勝したとき、僕より周りの人が喜んでくれるのがうれしいし、感謝の気持ちでいっぱい」とはにかんだ24歳は、さらに続けた。「リオ五輪で金メダルを獲るまで、一戦一戦を全力でやっていきたい」――。まずは来年、日本男子最多に並ぶ世界選手権4連覇が待っている。
◆海老沼 匡(えびぬま・まさし)1990年(平2)2月15日、栃木県小山市出身。4段の父・時男さんの影響で、2人の兄が通っていた野木町スポーツ少年団で5歳から本格的に柔道を始める。東京・弦巻中から世田谷学園、明大と所属の吉田秀彦監督と同じ経歴をたどる。肩車やすくい投げを得意としていたが、ルール改正で一時不調に。そこから復活して11年世界選手権パリ大会で優勝し、12年ロンドン五輪では銅メダル。1メートル70。左組み。得意は背負い投げ。
▼日本男子・井上康生監督 海老沼はさすがの一言。2連覇した昨年からおごることなく、自分自身で強化して闘った。全ての柔道家の見本で心から敬服する。(銅メダルだった)ロンドンで置き忘れた大きなものが、2016年の五輪で待っている。
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