かくも厳しいNBAの審判、どこへ…人間の目こそスポーツの一部分
2016年05月05日 11:15
バスケット
残り時間は13・5秒。98―97とリードしたサンダーがタイムアウトの後、敵陣のサイドラインでスローインをしようとしていた。ボールがきちんと渡ればスパーズは時間を止めるためにファウルゲーム(意図的な反則)をするしかなかった場面。しかしス軍はオンコートにいたサ軍の4選手に密着してパスコースをさえぎった。
困ったのはスローイン役のサ軍ウェイターズ。これ以上ボールを持っていると5秒のオーバータイムとなるため、やむなくフリーになっていなかった味方のデュラントに浮いたボールを投げ入れた。デュラントはジャンプしてキャッチしたがバランスを崩す。そこをス軍のグリーンがうまくついてボールをはたき落としてスティール。ミルズ→ジノビリとわたって再度ボールはミルズに戻り、右のコーナーから「入れば逆転」のジャンプシュートを放った。しかしリングに触れることなくボールは落下。ゴール下にいたス軍オルドリッジがいったんキープしたがサ軍イバカとのルーズボール争いとなり、結局ここで試合終了のブザーが鳴った。この間、審判の笛は一回も鳴らなかったことも付け加えておく。
* * *
では翌日の“最後の2分間報告”を見てみよう。まずスローインをしたウェイターズはボールをリリースする前に目の前で両手を広げていたジノビリをひじで突いておりこれは検証の結果、反則と認定された。ただしジノビリは必要以上にウェイターズに近づいたためにサイドラインを踏んでおり、これは「遅延行為」に該当するバイオレーションだった。なのでまずここで笛が2回分、鳴らなかったことになる。
ところがこの場面ではさらにコート上にいたス軍のレナードとミルズがマークしていたサ軍の選手をつかんで動きを妨害していたことが映し出されていた。つまりさらに2回の笛が鳴っているべきだったという別の事実も判明。ではこれで終わりかと思えばそうではなく、インプレーとなったあとの最後の場面でサ軍のイバカは、ミルズが外したシュートをキャッチしたオルドリッジのユニフォームをつかんでいたのである。
13・5秒の間に笛が鳴るべき場面は計5回あったのだが、結局一度も審判は笛を吹いていない。実は試合終了後、ウェイターズのひじ打ちについて担当審判だったケン・マウアー氏(61)は「過去に見たこともないケースだったので当惑した。しかしビデオで見るとオフェンス側の反則としか言いようがない」と“誤審”を認め、アリーナ内は大混乱になった。
おそらく彼は、この映像を見た「最後の2分間担当」が必ず「反則である」という認定を下すと感じたのかもしれない。ならば今、潔く認めておこうとしたのかもしれないが、昔は審判が試合後に「自分の笛は間違ってました」などとは絶対に言わなかったから違和感が残った。
大リーグ、NFL、NHLといった北米4大スポーツに加え、日本のプロ野球でもビデオ判定は当たり前のようになった。その電子の目があるために、審判の目はより正確さを求められている。しかしその人間の目こそがスポーツの一部分ではなかったか?
NBA上層部の判断が間違っているとは言わない。だが勝敗が変わらない以上、報告の内容は審判だけに告げてメディアに公表する必要はないと思う。なぜなら記者も選手同様に困惑するのだ。 「あれがああだったらどっちが勝って、どっちが負けていた?」。その推理をするだけで原稿はどんどん長くなる。ほら、このコラムもこんなに行数がかさんでいるし…。(記者コラム・高柳 昌弥)
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