錦織圭と松井秀喜氏の知られざる関係 超一流の教えが超一流育てた

2016年07月09日 09:20

テニス

錦織圭と松井秀喜氏の知られざる関係 超一流の教えが超一流育てた
錦織圭(左)と松井秀喜氏
 米フロリダ州タンパでヤンキースの春季キャンプに参加していた当時現役の松井秀喜氏の元にその依頼があったのが、具体的に何年のことか定かではない。依頼主はタンパから南へ1時間ほど車を走らせたところにある、同州ブラデントンのIMGアカデミーへテニス留学している日本の少年だった。世界でも選りすぐりのエリートのみが通えるアカデミーに通っているのだから、実力や潜在能力は申し分ない。ただ、試合になると実力を発揮できない。どうすれば、コート上で100%のパフォーマンスを発揮できるか。主にメンタル面での助言を求めてきたその少年に、松井氏は関係者を通じてアドバイスを送ったという。
 松井氏と錦織圭。競技は違えどトップを極めた2人の知られざるやり取りだ。

 ウィンブルドン選手権を取材する機会に恵まれた。残念ながら錦織は、前哨戦で痛めていた左脇腹痛が完治せず、14年全米オープン決勝で敗れたチリッチ(クロアチア)との4回戦途中で棄権。苦手としてきた芝でのテニスに手応えを見せていただけに、非常に残念な幕切れとなった。

 ただ大会中は試合後の会見を通じ、その精神面の強さを何度も感じる機会があった。特に2回戦後の会見では、海外メディアからのケガの状態に関する質問を繰り返された中で、表情を変えずに問題なしを強調した。実際に1回戦よりは状態が良かったようだが、棄権した4回戦後の会見では「ほぼどの試合もウオームアップの時に凄く痛くて、それで試合に入って何とかやってきた」と明かした。確実に痛みは続いていた。それでも試合がある限りは弱みを見せない。メンタルの強さを感じたワンシーンだった。

 数年前の松井氏からの助言が、錦織の現在の活躍とどうリンクしているのか。残念ながら今回は本人に問う機会がなかった。それでも「不動心」や「信念を貫く」などの著書で描かれている松井氏の心の持ちようと、錦織の試合やテニスに対する心構えには、共通するものを感じた。そしてこうも思う。今後数年は世界のトップで活躍が見込める錦織も、折に触れて少年少女たちにちょっとした助言をしてあげてほしい。(きっと現在もしていると思うが)超一流の教えが、将来の超一流を育てていくはずだ。(阿部 令)

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