チームNO―SIDEの挑戦 ボランティア1万3000人“協力”スクラム
2019年06月25日 10:00
ラグビー
「チームとして3つのゴールを設定している。最優先はしっかり大会が運営されること。2番目は楽しんで活動してもらい、特別だったと感じてもらうこと。3つ目は楽しんで活動している方を通じて、大会、開催都市や日本、ボランティアの魅力が伝わること」
そう話すのは、組織委でボランティア戦略を担当する神野幹也氏(32)。町田市職員時代には東日本大震災の被災地である岩手県大槌町で復興業務に携わり自身もJリーグでボランティア活動を経験。18年2月から組織委で勤務する。
募集人数は当初1万人だった。だが3万8000人という想定以上の応募人数を受けて運営計画を見直し、3000人を上乗せした。興味深いのが男女比がほぼ半々、平均年齢46歳という採用者に対するアンケート調査の結果だ。プレー経験者は10・5%にすぎず、「ラグビーに興味はない」と答えた人が12・4%を数えた。全国12の開催都市で「興味ない」と答えた割合が最も高かったのが釜石の40%。ボランティア未経験者も全体の58・6%を占めた。
神野氏は「ラグビーと関わりが深い方が多いと想定していた。逆にチャンス。競技を広げる観点で、凄く価値がある」と話す。一般的にスポーツボランティアは、最終的にその競技に取り組む学生が動員されることが多い。その点でもこれまでの実態を覆す結果だ。
全体の77%となる約1万人が、街頭や主要な駅、スタジアム内で接客に従事する。顧客満足度、すなわち観戦者をいかに楽しませるかが、この1万人に懸かっている。そのために組織委が作成したのが、「NO―SIDE」の頭文字を取った6つのプリンシプル(行動指針)。その6つに通じるのが、自己も他者も大切にするという信念だ。
組織委の職員とボランティアの関係は決して主従ではなく、あくまで一つのチーム。神野氏も「スタッフとの温度、目指しているベクトルをそろえて、コミュニケーションを取りながら一つのチームになることが重要」と説明する。1万3000人は下請け業者ではなく仲間。18年平昌五輪では扱いに不満を持ったボランティア約2000人が離脱し、組織委が謝罪に追い込まれた例があるように、気持ちよく従事してもらう環境づくりにも心を砕いている。
来年の東京五輪は、10万人以上のボランティアが大会を支えることになっている。かつてないほど、スポーツボランティアに注目が集まる2年間。先陣を切るチームノーサイドが、東京五輪の成功へとつなげる。
《スーパーボールで“テスト”》募集の際に面接代わりに行われたのが、応募者によるグループワークだ。初めて顔を合わせた8人が車座になり、長さの違う3種類の雨どいを使ってスーパーボールを3周させるというもの。コミュニケーションの取り方などをチェックし、当落の参考にした。同様の方法は東京マラソンのボランティア採用でも実施。ラグビーW杯では初の試みで、神野氏は「1対1の面接だと最初から関係性が固定され、ボランティアに従事する場合に見せる顔と違う」と理由を説明。「無の状態からチームをつくる」方法で適性を見極めた。
《各地でリーダートレーニング中》ボランティアは18年4月から約3カ月間募集し、同年8~12月にグループワークを実施。今年1月に結果が通知された後は、オリエンテーションやeラーニングによる研修が行われた。現在は選抜された約1300人が、開催各地でボランティアリーダーのトレーニングを受けている。今後は実際の活動日や活動内容が全採用者に通知され、8月にはトレーニングが実施される予定だ。
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