乙黒拓、初五輪!レスリング界の若き天才が“大人”に成長
2019年12月23日 05:30
レスリング
第1ピリオド残り40秒でバックを取ってローリングで一気に加点し7―0。相手の反則でグラウンドからプレーが再開すると、第1ピリオド終了間際にひっくり返し、Tフォール。わずか2分59秒で勝負を決めた。慎重で確実な試合運びで勝ち上がった準決勝までと同様、豪快さの中にも冷静さが光った。
18年に日本男子史上最年少で世界選手権を制した天才は、熱い闘志を前面に出して完璧を求めた。だが、それは長所であると同時に短所でもあった。今年の世界選手権は3回戦で敗れ敗者復活を勝ち上がって代表に王手をかけた3位決定戦も敗戦。先行された焦りから攻め急ぎ、失点を重ねた。
帰国後すぐは「ピンときた反省がなかった」というが、その中で考え抜いてたどり着いた課題が精神面だった。練習では息が上がる場面こそ一度落ち着くようにし、マットの外ではオンとオフを切り替えた。「世界選手権で優勝していたら五輪本番でコケたかもしれない。敗戦のおかげでいろいろと経験できた」。幼少期から指導する父・正也さん(46)も「たくさん点を取りたい、フォールしたいと思ってやっていたところから、1点取られても良いという大人の戦い方になった」と目を細めた。
常日頃から競い合う74キロ級の兄・圭祐も五輪代表に王手をかけた。乙黒拓は「2人で五輪に行って2人で金メダルを獲りたい」と新たな目標に照準を定める。情熱と冷静を兼ね備えた21歳が、東京へのスタートを切った。
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