社労士に聞いた「五月病になりやすい人」の特徴。4月から予防・対策しておくのが“吉”
2024年05月07日 09:00
五月病とは「新環境に対するストレス反応」である
五月病(ごがつびょう)とは、主に新しい環境や生活スタイルに適応する際に、心身の不調やストレスが現れる症状を指します。
正式な医学用語ではありませんが、軽度のうつ病に似た症状が短期間現れます。
一般に、新しい学校や職場、新生活が始まり、ゴールデンウイーク明けによく発生することから、5月病と呼ばれています。
最近では「六月病」も同じ意味合いで登場しています。
こんな状態になっていませんか? 五月病によくある症状
五月病には、以下の症状が見られます。
症状1 体調不良
頭痛やめまい、倦怠感、体のだるさなどが現れることがあります。
症状2 不安やイライラ、抑うつ感
新しい環境に適応する不安や、人間関係のストレスから抑うつ状態になることがあります。
症状3 集中力の低下
仕事や学業に対する集中力が低下し、業務や学業に取り組むことが難しくなることがあります。
症状4 睡眠障害
不安やストレスから睡眠の質が低下し、寝不足や不眠症が生じることがあります。
症状5 疲れやすい
新たな仕事に慣れようとする過程で、体力的または精神的な疲労が蓄積しやすいです。
症状6 食欲不振や過食
ストレスや不安により、食欲がなくなったり、逆に食べ過ぎたりすることがあります。
なぜ五月病になるの? その原因は「ストレスの蓄積」
では、なぜ5~6月にかけてこのような症状が起きやすいのでしょうか。五月病を引き起こす原因を見ていきます。
変化によるストレスの蓄積
五月病が発生する主な原因は、ストレスの蓄積です。
春は新入生や新入社員をはじめ、異動、新メンバーや業務の追加など、環境がガラッと変わる時期です。それにより人間関係や生活リズムなども大きく変化します。
「変化」はストレスに繋がります。結婚や引っ越し、出産、昇進など“良い変化”であってもです。
変化に対応するだけでもストレスがかかっているのに、周囲との比較や自己評価の低下、新しい環境への不安などが積み重なることもあるでしょう。
そうしたストレスに対して回復が追いつかなくなると、五月病の症状を引き起こすことがあります。
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ストレスがかかっても、一時的に耐えることはできる
「ストレス反応」と呼ばれる対抗手段が人体には備わっていますので、ゴールデンウイークまではなんとか持ちこたえることができます。
しかし、連休で一時的に休息を得ることができるとストレス反応も効かなくなり、いわば防御力が下がった状態で連休が明け、またストレスフルな日常がスタートします。
そこに再びストレスが加わると、五月病の症状が現れてしまうというわけです。
気候や気圧の変化
季節の変わり目は寒暖差や気候の変化が多く、自律神経の乱れを引き起こす要因となります。
自律神経が乱れると体の不定愁訴にもつながり、睡眠障害や疲労感なども引き起こすため、心身の回復を妨げます。
これらの要因が組み合わさることで、五月病の症状が発生する可能性が高まります。
五月病になりやすい人の特徴とは。こんなタイプは要注意
一概に当てはまるわけではありませんが、以下の特徴がある人は、ストレスを感じやすく、五月病になりやすいと考えられます。
新しい環境への適応能力が低い人
新しい学校や職場、新しい生活スタイルなど、環境の変化に対する適応能力が低い人は、五月病になりやすい傾向があります。
環境の変化に適応することが苦手で、ストレスを感じやすい人が該当します。
社会的なプレッシャーや期待に敏感な人
周囲との比較や社会的なプレッシャーに敏感な人は、五月病になりやすい傾向があります。期待に応えようと過度に頑張ってしまうのです。
自己評価が低い人
自分に対する評価が低く、自信を持てない人は、変化が起きた際に自分の役割や立ち位置、能力に対して不安が大きく、精神的な不調を引き起こすことがあります。
季節や生活リズムの変化に敏感な人
季節の変わり目は気温や気圧差が大きく、身体の調整に時間がかかります。これによって、睡眠パターンの乱れや体調不良が引き起こされ、精神的な不調を招くことがあります。
また、睡眠時間や食事、運動などの生活リズムが崩れ、それによる影響を大きく受けてしまう人も注意が必要です。
寝不足や忙しいとイライラする、ネガティブになりやすいなどです。
ストレスのコントロールが苦手な人
また、ストレスを自分でコントロールできない人などは、そのストレスの重圧に負けて精神的な不調をきたしてしまうことがあります。
これらの特徴が当てはまるかどうかは、体調やタイミング、ライフステージなどによっても変化します。
今はそうでなくても、数年後は当てはまるなどのパターンもありますので、「そういうこともある」と知っておくだけでも有益です。
五月病になりやすい性格ってあるの? 完璧主義やネガティブ思考、ストレスコントロールが苦手な人などは要注意
では、そもそも五月病になりやすい性格はあるのでしょうか。
たとえば以下のような傾向があると、五月病やメンタル疾患のリスクが高まるとされています。
完璧主義
完璧を求める傾向が強く、その期待に添えないとストレスを感じやすいタイプ
マイナス思考
ネガティブな考え方が前に出ており、マイナスの出来事に過剰に反応するタイプ
ストレス耐性が低い
ストレスに対する耐性が低く、コントロールケアが苦手で、小さな問題やプレッシャーでも大きく感じるタイプ
精神的・肉体的な疲れを感じやすい
働きすぎや負荷の高い生活スタイルを送っており、身体的・精神的な疲労が蓄積しやすいタイプ
とはいえ、こうした性格だけでなく、生活状況やストレスへの対処能力、職場環境なども大きく関係していることを忘れないようにしましょう。
五月病になるかもしれない「前兆」とは。よく眠れない、食欲の変化、イライラ、不定愁訴など
なんとかして五月病を避けたい人は、その「予兆」が出てきた時点でセルフケアをしておきましょう。以下の変化に注目です。
睡眠障害
新しい環境への適応が難しくなる前兆として、睡眠障害が現れることがあります。寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりすることがあります。
食欲の変化
新しい環境に対する不安やストレスから、食欲が低下したり、過食気味になったりすることがあります。
食事に興味がなくなることも前兆のひとつです。
不安やイライラが増えた
春のタイミングで、不安やイライラが増えたと感じる場合、五月病の前兆と言えます。
集中力の低下
新しい環境に適応するためのストレスや不安によって、集中力が低下することがあります。以前はできていた仕事ができなくなってきた、学業に身が入らないなどは要注意です。
身体的な不調が増えた
頭痛やめまい、胃痛、肩こり、咳、喉の詰まりなど、身体的な症状が現れることがあります。また、疲れやすいというのもチェック事項のひとつです。
五月病の抜け出し方。連休前から心掛けておくことで予防にも
五月病対策としてもっとも有効な方法は、ストレスと疲れを蓄積させず、定期的に解消すること。そのための回復方法として、以下のものがあります。
睡眠を十分に取る
睡眠不足は心身のパフォーマンスを低下させます。一般的には成人で7時間前後の睡眠が必要とされていますが(※)、年齢や状態によって異なります。
スッキリ起きることができる自分に適切な睡眠時間を探り、それを確保しましょう。
(※)健康づくりのための睡眠ガイド 2023 - 厚生労働省
栄養バランスのよい食生活を心掛ける
栄養バランスの良い食事は心身の健康に役立ちます。脳の機能に影響し、気分やストレスへの対処能力を向上させます。
また、血糖値の安定化によって気分の波を抑え、精神的な不調を軽減します。
適度な運動を取り入れる
適度な運動はストレス解消やリフレッシュに効果的です。体を動かすと交感神経が活発化し、β-エンドルフィンやドーパミン、セロトニンといったホルモン分泌が盛んになり、心にも良い影響を及ぼします。
運動をした疲れによってよく眠れますし、食欲の正常化にもつながります。
自分に合ったストレス発散法を取り入れる
マインドフルネスや瞑想、ヨガなどは、ストレスを軽減し、心身のリフレッシュを図るツールとして科学的にも有効です
とはいえ、ストレス解消は個人差が大きいもの。自分が「楽しい」と思えることを普段からリストアップしておき、ストレスが溜まったらその中から好きなものを実行するとよいでしょう。
編集部のストレス発散リスト実例
ストレスレベル1
- コンビニで好きなお菓子を買う
- SNSで交流する
- お風呂にゆっくり浸かる
ストレスレベル2
- Amazonで好きなアイテムを買う(3000円以内)
- 怖い話を読む
- 筋トレをする
ストレスレベル3
- 漫画をひたすら読む
- 寝る
- 定時帰宅する
- 髪を切る など
仕事や学業のやり方を調整する
ずっと溜まっているタスクは片づけておきましょう。やる気は行動を起こすことで湧いてくるので、そのタスクのなかでもっとも簡単にできる第一歩に手を付けることが重要です。
仕事量が多いなら、業務量の調整を相談する、役割を割り振るといったことも連休後の心を軽くします。
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休日にメールやチャットを見るか、見ないか
中には、オンオフの切り替えがハッキリしすぎて連休明けのブルーマンデーに陥るパターンもあります。また、GWなど大型連休の場合、メールや仕事が溜まっていき、連休明けの五月病のトリガーになることも。
そうした場合は、休日も1日1回だけメールチェックを行うなど、負荷を分散させるという手もあります。
逆に、休暇中は一切仕事のことを考えないほうがリフレッシュできるという人もいます。どちらが自分に合っているかで対策を変えるとよいでしょう。
病院に行ったほうがいい目安は「症状が2週間以上続き、生活に支障をきたしている」
五月病の症状により、2週間以上、日常生活に支障をきたしている場合は、心理カウンセリングや精神科医の診察を受けることを検討してください。
回答者プロフィール
社会保険労務士法人レクシード 代表 鈴木教大
社会保険労務士法人レクシード代表。沖縄から北海道まで数百社にのぼる顧問企業の支援実績から、労使トラブル対応など、特定社会保険労務士として現実的な解決策提示・予防措置提案を行うエキスパートとして定評があり、企業の労務を“予防”という視点からサポートすることに力を入れている。
公式サイト https://www.rexseed.jp/
<Edit:編集部>