大谷プロ1号「やっとか」92打席目は「遅かった」
2013年07月11日 06:00
野球
ついに出た。日本ハム・大谷翔平外野手(19)が10日、楽天戦の4回に内角球を引っ張り、右翼席中段へプロ初本塁打。通算92打席目でのメモリアルアーチとなった。投手と野手の「二刀流」。野手としても無限の可能性を示した2ランで、チームに勝利と貯金1をもたらした。高卒1年目ルーキーが投手として白星、本塁打をともにマークするのは、67年の江夏豊(阪神)以来。大谷が、球史にまた新たな足跡を刻んだ。
薄暮の仙台の空に、美しい放物線を描いた大谷の打球は、右翼席中段に吸い込まれた。
「やっとか、という感じ。遅かったかなと思う。(感触は)最高でした。本当にうれしかった」
開幕から3カ月余り…。プロ92打席目にしての待望の初アーチ。こみ上げる喜びと安ど感をかみしめながら、大谷はダイヤモンドを一周した。
2―1での4回1死三塁。2ボールからの3球目。永井が内角やや高めに投じた138キロの直球を腕を畳んでコンパクトに振り抜いた。
内角を狙っていた。3割を超える打率を残す大谷だが、これまで13本の長打(すべて二塁打)のうち10本が左方向だった。「率が残せるし、無理に引っ張っても仕方がない状況もある」。チーム打撃を最優先してきた。最近では相手チームは大谷の打席では外野陣が左に寄るシフトを敷き、この日の楽天も同様だった。数日前、首脳陣から「内角を打たないとどんどん突かれるから、内角を打て」とはっぱをかけられた。事実、前日の楽天戦でも田中に厳しく内角を攻められ、プロ初死球も受けた。だから、内角も打てることを証明する必要があった。
大谷自身、「もともとは内角の方が得意だし、引っ張る方」と言う。内角の肘の抜き方がうまく、フォロースルーも大きいので本来は飛距離が出る。さらに花巻東時代は「松井選手は軸足(左足)で打つ。自分もそう」と昨季限りで引退した松井秀喜氏のフォームを参考にしていたともいう。高校通算56本塁打と元来は長距離砲。昨年12月、プロ1打席目の予想を「本塁打」と答えていた。
内角球をスタンドに運んだ意味は、「二刀流」でプレーしていく上で、とてつもなく大きい。打てなければ、内角をさらに厳しく攻められる。投手として利き腕である右腕に死球を受ける可能性も高まる。それだけに「一発のない打者は怖くない。長打もあるんだと相手のデータも変わってくると思うし、自信になると思う」と胸を張った。初体験は本塁打だけではない。8回には長谷部から中前打し、左腕相手に通算8打席目にして初安打も放った。
岩手県出身の大谷にとっては、故郷に近い仙台で記念すべき一発。そして、チームの勝ち試合で3試合連続でヒーローインタ ビューを受けた。投手として2勝目を挙げた4日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)、3打点を挙げた7日のオリックス戦(札幌ドーム)、そしてこの日。「東北で打てて良かったし、思い出に残る」。はにかむ19歳に、敵地にもかかわらず、試合後もいつまでも温かい拍手が送られていた。
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