震災後初!高田が夏1勝 あきらめない気持ち学んだ1年
2013年07月11日 06:00
野球
東日本大震災から3度目の夏。全国高校野球選手権岩手大会が10日に開幕し、高田高校は1回戦で盛岡中央と対戦。同点の9回に山口直樹外野手(2年)が走者一掃の二塁打を放つなど、19安打の猛打で11―7と劇的な逆転勝利を収めた。震災後初の夏1勝に加え、今年4月に就任した伊藤貴樹(たかき)監督(32)にとっても記念すべき初勝利。高田高校の夏が、最高の形で幕を開けた。
薄曇りの空に、光が差した。照明が点灯した9回2死満塁3ボール2ストライク。4番・山口は狙っていた。「フルカウントに追い込まれたから、絶対にストレートがくる」。盛岡中央・平内が投じた6球目、内角直球を思い切り振り込む。打球は大きな弧を描き、左翼ポール際フェンスを直撃した。
「津波で道具とか全部流されてしまったけれど、野球をやりたい気持ちまで流されたわけじゃない」。震災時は、中学2年だった。想像を絶する災害は、山口から家や生活道具一式を奪った。現在は、同じ地区の高台に暮らす。幸い、家族は全員が無事だった。そして、野球が好きな気持ちが残された。
1年秋から打力を買われ、4番を務めた。しかし期待は重圧となって山口を襲った。結果が残せない。焦る気持ちは、体にも表れ、春にはストレス性胃炎を発症した。
それでも、「自分が打たなければチームが勝てない。打つしかない」と開き直った。この日は決勝打を含む3本の二塁打で、6打数3安打5打点。「ここで打ったら俺ってヒーローだなって思ってました」。心の余裕も生まれた。
伊藤監督にとっても、悲願の1勝だった。秋田では主将を務め、東北大会8強。早大では和田(オリオールズ)の同期で、外野手として3年春、4年秋にベストナインを獲得。4年時には副主将を務め春秋連覇に貢献した。卒業後は選手を続ける道もあったが、迷わずに指導者を目指した。
秋田・明桜、大曲でコーチを務め、岩手県の教員採用特別選考枠(スポーツ)で教職員の道に進んだ。盛岡一では部長を務め、09年夏の岩手大会決勝で菊池雄星(西武)を擁する花巻東を相手に1―2と互角に戦った。
盛岡一時代の11年3月11日、巨大津波が襲った日、伊藤監督は生徒の語学留学の引率教師として英国に滞在中だった。日本に戻りたくても戻れない。毎日、ネットを通じて情報を得る歯がゆい日々を過ごした。
震災から1年が過ぎた12年4月、高田高校への赴任が決まった。歯がゆさがまた、伊藤監督に生まれる。「自分は津波も、その大きな揺れすらも体験していない。そんな自分が生徒とどのように接するべきなのか」。結論は、自ら出した。
「知らないことを知っているふうに振る舞うのが一番嫌だった。知らないものは仕方がない。ならば、自分のできることをやろう」。分かったふりをすることは、選手にも失礼だと肝に銘じた。その分、野球を通じて心を通わせた。勝つことで生まれる喜び、強さ。とことんそれにこだわった。時には「強い男になれよ!」と叱咤(しった)した。厳しい言葉も投げかけた。その代わり、良いプレーが生まれた時は心から褒めた。練習が終われば肩を抱き、歩幅をそろえ、生徒の高さに目線を合わせた。
「わたしの初勝利より、チームが勝ったことが大きい。勝った経験がほとんどない彼らに、勝つ喜びを与えられたかな」。試合後は期待以上の活躍を見せた彼らを、心の底から称えた。
カクテル光線の中、勝利チームの校歌が流れる。それに合わせ、選手は大きな声で、そして笑顔で歌う。「震災を乗り越えた精神力の強さが出た。1カ月も遅く始まった高校野球。できるだけ長く続けたい」。震災直後の入学生、村上莉玖(りく)主将(3年)は誇らしげに胸を張った。
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