顕著だった三振か四球…藤浪 成長を物語る「ピンチでの圧投」

2015年12月20日 09:00

野球

顕著だった三振か四球…藤浪 成長を物語る「ピンチでの圧投」
藤浪は契約更改を終え、笑顔で会見する
 エース格の成績を残した阪神・藤浪の今季の傾向をひと言で示すと「三振か、四球か」だった。
 顕著な例が9月3日の広島戦(甲子園)だ。初回先頭の丸を四球で歩かせたのをはじめ、実に9四球。7イニングで5度、得点圏に走者を背負ったが、3回の3者連続を含む12三振を奪い、1失点のみに抑えた。シーズンでも221奪三振で初タイトルを獲得した一方、リーグ最多の82四球という制球難も見せた。

 奪三振能力には傾向がある。窮地ほど確率が上がることだ。走者別の対戦打数に占める割合は、走者なし・302(414打数125三振)、走者一塁・197(127打数25三振)に比べ、得点圏では・382(186打数71三振)に上昇。ピンチでは三振を狙い、狙い通りに奪うことができた。3年目の進化を物語る要素だろう。

 確かに得点圏では打球を前へ飛ばさせない三振は最も安全な抑え方と言える。実際に粘り強さがあったから勝ち星にも結び付いた。得点圏被打率は菅野(巨)の・190に次ぐ・199。特に同点の場面では80打数10安打(・125)とめっぽう強く、昨季に比べ得点力の落ちた打線の援護を辛抱強く待った。

 先発した28試合のうち先制の援護を得るとチームとして16戦全勝(藤浪12勝)、逆に先制を許した12試合で3勝9敗(同2勝7敗)と極端な結果が出た。藤浪に対する“依存度”を示す数字だろう。

 勝負どころで力投が冴えた―と分析できる一方、走者を背負う場面が多ければ体力的、精神的な消耗は避けられない。本人も「ここ一番でのアウトの取り方が三振しかない」と振り返る。

 投球数の課題は明白だ。82四球に加え、11死球も両リーグワースト。9イニングあたりの与四死球数を示す与四死球率は、13年3・01、14年4・14、15年4・21で実は年々悪化している。

 四死球が多ければ、必然的に球数も増える。1イニングあたりの投球数は、規定以上の投手では2年連続でリーグ最多。最多勝の前田健(広)は直近3年間とも15・50球を下回っており、今季は藤浪よりも約200球少ない3189球で206回1/3をまかなった。

 また、1年目から課題とされた対左打者の被打率は昨季の・306から・241と表面的には大幅に良化した。ただ、セの規定打席以上の打者に限ると101打数30安打(・297)と打ち込まれた。規定未満だった阿部(巨)に対しても17打数7安打(・412)、松山(広)は12打数7安打(・583)と苦手にしている。下位打線は“顔”で抑えているだけに、主軸に対しても、もっと圧倒してほしい。

 もちろん、球界を代表する速球派にしてリーグ最多7完投(4完封)で抜群のスタミナを誇るなど、能力の高さは言わずもがな。レベルの高い課題をクリアした時には、阪神のみならず球界の大エースになっているはずだ。 (記録担当・石丸 泰士)

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