野球の言魂(コトダマ) ヤクルト・山田哲人編
2018年06月10日 09:30
野球
オリックス先発の西は手の付けようがない出来だった。7回1安打1四球。ヤクルト打線唯一の安打は川端の二塁内野安打だった。山田哲は3打席凡退。6回の第3打席には143キロの直球でバットをへし折られ、率直に「全体的にコントロールがよくて、スライダーとフォークも途中まで真っ直ぐに見えた」と西の投球を称えた。
この日の西の96球には鬼気迫るものがあった。まして一発で展開を変える力を持つ山田哲に対して、3打席で12球。甘い球など投げるはずがない。「ただ、僕のときは甘い球も何球かあった」という感覚は相対的なものではない。あくまで山田哲の目には「甘い球」があった、という意味だ。西の至極の12球の中にさえ、現役最高の右打者は打てる球を見いだしていた。
そして、山田哲はこう続けた。「相手がどうこうではなく、自分のスイングが出来なかったことが悔しい」。他人には見えないミスで自らを戒める。天才というのは、かくも孤独にミクロな勝負を強いられる存在なのだ。
同じ試合で2点を追う8回2死一、二塁の場面で山田哲は2番手の山本から右翼フェンス直撃の強烈なライナーを放った。際どい打球で、一度はファウルと判定した審判団が集まり、リプレー検証するか検討を始めた。フェアなら同点となり、ヤクルトの7年ぶり8連勝も見えて来る。
ヤクルトの小川監督はリクエストすべきか、山田哲に確認した。指揮官には打球の到達地点はベンチの壁に遮られて見えなかったからだ。山田哲はこう答えたという。「ファウルです」。この潔い言葉でヤクルト側はリクエストを行わず、審判団もリプレー検証には入らなかった。
審判団さえも判定に迷う微妙な打球も打った山田哲はファウルと確信していた。万に一つの可能性も排除する精密性は、天才の極みとしかいいようがない。(専門委員)
◇君島 圭介(きみしま・けいすけ)1968年6月29日、福島県生まれ。プロ野球やJリーグのほか、甲子園、サッカー選手権、花園ラグビーなど高校スポーツの取材経験も多い。現在はプロ野球遊軍記者。
おすすめテーマ
2018年06月10日のニュース
特集
野球のランキング
-
ロッテ・ボルシンガー7回2失点で7勝目 自身は6連勝
-
ソフトB、連敗4でストップ 柳田が2打席連発&全5打点!中日は4連勝ならず
-
大阪桐蔭・西谷監督「これじゃ大阪でも負けるぞ」 選抜以降の対外試合で初黒星&連敗
-
ロッテ藤岡裕 “先輩の意地”でプロ初3打点「負けられないと思った」
-
-
巨人ルーキー大城、プロ初サヨナラ打!代打で決めた「サイコーでーす!」
-
慶大・大久保監督「リーサルウェポンは若林」 3番・DH起用で31年ぶり日本一だ
-
ロッテ逆転勝利 ボルシンガー7勝目 阪神3連勝ならず
-
バレ5打点!ヤクルト序盤大量得点で逃げ切り オリックスは田嶋が誤算
-
広島 楽天に3連戦3連勝!西川が決勝3ラン 楽天は7度目零敗で借金19…
-
巨人が今季初のサヨナラ!ルーキー大城、自身初の劇打で決めた
-
東洋大・上茶谷 大学日本一へ「先を見ずに一戦一戦、戦っていきたい」
-
筒香が勝ち越し3ラン!DeNA 降雨コールド勝ちで3連勝!勝率5割に戻す
-
ダル 大谷について「何とも言いようがない」
-
巨人・坂本勇が初回先頭弾!前日の逆転弾に続く2戦連続アーチ
-
森本稀哲氏、金爆・樽美酒と白塗り対決で沸かせた「こう見えて野球選手ですから」
-
大阪桐蔭大敗 中京大中京の変則左腕がドラ1候補の根尾らから4者連続K
-
復活への一歩を踏み出した、永川が燃やす情念の炎
-
目指すは大学日本一 東洋大・甲斐野 159キロに詰まった父の思い
-
野球の言魂(コトダマ) ヤクルト・山田哲人編
-
石井一久氏、大谷の故障を解説 自分の体の出力以上の動きをした弊害か
-
【伊東勤 視点】ブルペン不安の西武 疲れていた多和田続投が裏目に
-
NTT西 阪神・小野の同期「ハマショー」が決めた!4年連続都市対抗切符
-
【隠しマイク】広島・新井が暴露!?「え?野間って○○アナと付き合ってるんや!」
-
阪神・岩貞、力投7回零封!“中19時間半”「言い訳にしてはいけない」
-
阪神・能見“新天地”でサヨナラ呼んだ 2回零封で通算100勝王手
-
広島・松山“劇的アンパンチ” 則本から逆転2ラン「最高にうれしい」
-
日本生命サヨナラ負け 16年ぶり都市対抗出場逃す
-
【北北海道】ドラマは9回2死無走者から…旭川実“規格外”チームのミラクル
-
松坂、臀部の張り「大丈夫」次回登板は古巣・西武戦の見込み
-
DeNAドラ2神里がV撃!ドラ1東に負けじ4安打&“神”走塁
-
初お立ち台のDeNA神里 野球教えてくれた父へ“少し早い”プレゼント
-
DeNA神里、球団史上2人目新人4安打 94年の波留以来
-
大谷、前半戦絶望…右肘じん帯損傷で最悪手術 昨年10月より悪化
-
日本人投手苦しむ右肘の故障 マー君は注射 ダルは再建手術で14カ月離脱
-
大谷負傷離脱 米球界全体に激震「今年最も残酷なニュース」
-
マー君 両太腿に張り…無念降板 全力疾走で同点ホームも痛い代償
-
平野15戦連続無失点 高地で高い修正力発揮「いつもより下に」
-
坂本“セ全勝弾”一振りで敗色ムード一変 巨人独り負け阻止
-
セ・リーグ6球団が全勝 14年6月15日以来4年ぶり3度目
-
巨人、西武に打ち勝った 坂本&阿部&岡本で全8打点
-
巨人・坂本&阿部34度目アベック弾 勝率8割オーバー
-
西武・多和田ガックリ 痛恨被弾で8勝目逃す「悔いが残る」
-
西武おかわり 20戦目で1号「これからまた打てるように」
-
中日“松坂効果”?登板翌日7連勝 ガルシア今季2度目完封
-
ソフトB4連敗 今季初の零封負けに工藤監督「完敗」
-
阪神・福留、先制4号 激走二塁打&犠飛も「最低限の仕事」
-
ロッテ史上初2戦連続失策サヨナラ負け 延長12回に中村悪送球
-
ロッテ、失策サヨナラ負けは3年連続 球団ワースト新記録
-
ヤクルト中村“ツバメの顔弾”イケメン総選挙圏外も女性の目線独り占め
-
ヤクルト・カラシティー好救援4勝 先発準備万端5回1安打零封
-
オリ・ディクソン背信1回6失点 8戦未勝利で登録抹消へ
-
広島ジョンソン“パパ1勝” 再合流後初登板で7回1失点
-
楽天、則本でも勝てず借金最多18 8回2失点熱投実らず
-
ハム中田14号も空砲 惜敗に「粘って負けるのが一番悔しい」
-
清宮、シート打撃で一発「入ると思わなかった」12日にも昇格
-
藤嶺藤沢エース矢沢“二刀流”進撃だ!投打でプロ注目“矢沢ネット”も設置
-
京都フローラ10点圧勝 中村4安打「シンプルに振った」
-
マー君 故障者リスト入り タッチアップの走塁で両太腿裏に張り