【タテジマへの道】梅野隆太郎編<下>天国の母のためにも
2020年04月16日 15:00
野球
「余命2カ月です」
小2のときに片縄ビクトリーズで野球を始めた隆太郎。実は父・義隆さん(48)の意向で、病のことをほとんど聞かされていなかった。無我夢中で白球を追い、病床の母に試合の結果を伝える。そして母は闘病日記の中で、息子の活躍を書き記す。母子2人の、ささやかな楽しみだったという。
「隆太郎をプロ野球選手にして…」
啓子さんの最後の願いは義隆さんに託された。
「どんな苦しい時も母親の顔を思い出しながらプレーしてきた。家族の支えがあって野球を続けられた」。隆太郎は母の夢をかなえてみせた。福岡大の寮の自室には、家族全員で撮った記念写真を飾っている。そして、自身の商売道具であるミットには「恩返し」の文字を刻む。これから先、どんなに苦しいことがあっても乗り越えられる。
今夏の日米大学選手権では地方大学の選手として初めて、主将の重責を担った。異例の選出の裏には善波達也監督(50、明大監督)ら大学日本代表首脳陣の「梅野しかいない」という満場一致の意見があったという。福岡工大城東時代に指導した杉山繁俊さん(56、現東海大五監督)も「人間性を評価してくれたことが何より嬉しい」。愛弟子の活躍を、今も切に願っている恩師の一人だ。
福岡大で1年秋から6季連続ベストナインに輝き、4年春には最優秀選手に。そして直後の日米決戦では3勝2敗で優勝を勝ち取った。2勝2敗で迎えた、神宮球場での最終戦。5回に勝利を引き寄せるソロ本塁打を放っている。大舞台で結果を残し、満を持してプロの門を叩く男は、グラウンドを離れても野球のことしか頭にない。杉山さんが笑顔で証言する。
「今でも高校の練習に顔を出して“交ぜてください”って言うんだ。“たまには遊びにでも行って、息抜きしてこい!”と言うんですけどね…。公式戦で、打っても打てなくても律義にきっちり連絡をくれる。プロでも必ず成功しますよ」
数々の出会い、そしてたった一つの別れを経て、隆太郎は強くなった。
「夢をかなえたことにホッとしている。母も天国から見てくれている。これからも頑張らないと」
最愛の母が絶えず、天国からほほ笑んでいてくれる。高い壁を乗り越える力をくれる。心は簡単には折れない。(2013年11月8日付掲載、おわり)
◆梅野 隆太郎(うめの・りゅうたろう)1991年(平3)6月17日生まれ、福岡県出身の22歳。小2で野球を始め、小4から捕手。福岡工大城東では1年夏からベンチ入りも甲子園出場はなし。福岡大では1年秋から6季連続ベストナイン。4年春はMVPに輝き、同年夏の日米大学野球では日本代表主将を務める。遠投115メートル。1メートル73、89キロ。右投げ右打ち。
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