【タテジマへの道】岩崎優編<上>水泳漬けだった小学生時代
2020年04月27日 15:00
野球
出産予定日より10日早く、産声を上げた。体重は3600グラムを超え母・恭子さん(50)は「保育器が小さくて…。よく足を投げ出していました」と笑う。3歳の頃には2つ上の兄・甫(はじめ)さんと身長はほぼ同じ。少しやんちゃな保育園児は、ウルトラマンが大好き。その一方、お遊戯が嫌いだった。運動会でも一人だけ輪に入らず。だが最後のリレーに演目が移ると、急に鉢巻きを締めてやる気を出した。心配した恭子さんに園長さんが言った。
「大丈夫ですよ。こういう子は出世します」
当時から「投げること」が大好き。どこへ行っても足もとの石を拾い、投げまくった。生粋の“鉄腕”。あるとき、キャンプ場でいつものように池に向かって投げていると、そこには素潜りをしていた甫さんが。顔に命中してしまい、周囲をヒヤリとさせた。大事には至らなかったことが不幸中の幸い。自慢の制球力はこのときから健在だった、ということか。
野球を始めたのは、清水第四中に入学してからだ。不二見小時代は、ボールを握らなかった。父・久志さん(51)が「変なクセがつくとダメだから、小学生では野球をさせない」という方針。不二見小の水泳部に入り、徹底的に肩回りを鍛えた。得意は平泳ぎ。「ずっと野球はやりたかったんですけど、体は鍛えられた」と優は当時を振り返る。小3年時の文集で「プロになりたい」を明記していたほど。だが6年間みっちり泳いだおかげで体は強くなり、土台が築き上げられた。
中学で軟式野球部に入ると、水を得た魚のように白球を追った。「やりたかったことができる」。皆が嫌がる厳しい練習も喜んで取り組んだ。学校の宿題や提出物も遅れたことは一度もない。その名の通り、「優」がつく生活態度だった。
目立った成績は残せなかった。3年間で静岡県大会すら行けず。それでも優の「プロ」への意識は不変だ。誘いを受けた清水東へ進学。しかし甲子園への道は険しかった。3年夏は2回戦でライバル校の清水商に1―2の惜敗。目指していた場所は遠かった。恭子さんは「大学でももちろん野球を続けてほしかった。やれるところまでやってほしい」。そんな優に、熱い視線を送る一人の男性がいた。 (13年11月12日付掲載、あすに続く)
◆岩崎 優(いわざき・すぐる)1991年(平3)6月19日、静岡県生まれの22歳。清水東では甲子園出場はなし。国士舘大では東都大学リーグ2部ながら3年秋に防御率2位の0・94をマーク。4年春も同3位の1・60を記録した。13年ドラフト6位で阪神入団。1メートル84、81キロ。左投げ左打ち。
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