東大野球部前監督・浜田一志氏が東京六大学を戦力分析 1試合総当たり制「短期決戦」の戦い方とは
2020年04月28日 16:01
野球
「大々的な練習ができないのは致し方ない。個人に委ねるんだけれど、最低やらなきゃいけないことを決めなければいけない。今ある筋肉を落とさないように、現状をキープすることを目標にするのが大事ですね。大学の施設も使えないし、自分でできるだけトレーニングをしていく。シャドーや素振りもそうです。ただ、個人に任せれば、人間はどうしても基準が甘くなる。基準を引き上げるためにスタッフがやることとしては(1)モチベーション(2)管理する、この2つが大事。(1)はリーグ戦が短期決戦となるなら何が求められるかと言うと、得意分野を持った人。足とか守備ですね。そういった想定でベンチ入りを決めるよ、とはっきり示してモチベーションにするということですね。(2)は学生コーチを中心にどれだけの量をトレーニングしているかや体重の報告だったり、そういうことをやって“こちらもちゃんと見てるよ”ということは必要だと思います」
――六大学では1試合総当たり制への変更が発表されています。戦い方はどう変わるでしょうか。
「勝ち点制で言う“1勝1敗で迎えた第3戦”という状況が常に続く状態になる。そうなればより失点できませんから、投手をつぎ込むことになるので、ベンチ入り投手を増やすことになるでしょう。25人中7人は入れておきたいところ。僕が監督だった時は常時6人を入れていました。攻撃もより1点を取りに行くだろうし、先制点の重要度が高くなって高校野球に近い戦い方になるのではないかと思います」
――先ほどおっしゃっていた得意分野を持った人もカギですね。
「短期決戦だと相手の先発が読みづらいこともあるでしょう。そういう場合、スタメンが相性が悪いとなれば、すぐに出ていける代打要員、代走要員がどれだけいるかは、かなり重要です。スペシャリストを目指す選手も増えるかもしれませんね。三塁コーチの判断もさらに大事になってきます。作戦タイムも増えるでしょう。ベンチのワサワサ感も注目ポイントです。ベンチワークやチーム力がより如実に出ることになると思います」
――実戦が少ない中でメンバーを決めるのも一苦労では。
「力を見抜くのはかなり難しい作業になるでしょう。例えば5月半ばに再集合できたとして、すぐに実戦感覚を取り戻さなければいけない。投手は毎日投げさせるわけにはいかないでしょうから、スタッフ陣はそこが一番大変だと思います」
――「短期決戦」をテーマに6校の分析をお願いします。
「まずは昨秋優勝の慶大。木沢君、佐藤君らを始め、投手陣がピカイチですね。逆に本格派がズラリとそろっているので役割分担をどうするかがカギです。また正捕手の郡司君(裕也、現中日)が卒業。後継候補には、1点を取りに行くなら打力よりリードや盗塁阻止の力にたけている人が出てくるでしょう。また、嶋田君や正木君が大振りせずにチーム打撃に徹することができれば優勝候補筆頭です」
――続いて法政は。
「法大は三浦銀二君の存在が大きいですね。自粛前のオープン戦でも良かったです。短期決戦で、後ろでピシャッと抑えられる投手を持っているのはかなり有利。1点リードなら勝てるという精神的優位にも立てるので大きな強みです。攻撃陣は中心打者の中村君や羽根君といった強打で俊足の選手が多いので、1点差を勝ちきれれば優勝争いに絡めると思います」
――早大について。
「早大はやはり早川君と徳山君としっかりした2枚看板がいるのが最大の強み。小宮山監督も5試合の先発はこの2人でまわせという気持ちでいらっしゃるでしょう。野手は昨年からほぼ全員入れ替わっています。通常リーグ戦のように開幕戦から探りながらというのができないから難しいとは思うが、手堅い野球は健在でしょう」
――立大について。
「立大はエースの中川君に、プラスアルファで2枚目の先発が出てくればなと。下手投げの中川君に、右の本格派の中崎君、さらに左の川端君が復活すればかなり多彩な投手陣。これは短期決戦では目先を変える意味ですごく有利です。打者も山田君や三井君がいる。豪快な打撃が売りですが、彼らがシャープに1点勝利を理解して打撃をしていけば、つながりでは一番良いのではと思います」
――明大はどうでしょうか。
「明大は大エースの森下君(暢仁、現広島)が卒業。入江君や竹田君、磯村君らリーグ戦登板経験のある投手が独り立ちできるかがカギです。昨年もそうですが、明大は9人で固定というよりも1試合で何人もの選手を使っていて層が厚い。短期決戦には一番向いているチームと言えます」
――最後に東大。
「エース小林や坂口らが卒業し松田や小宗といった技巧派投手陣がしっかり相手を研究して淡々と投げられるかどうか。打者は岡がキーマンです。梅山や笠原といった足を使える選手も多いですから、練習再開から足を絡めた得点力をどこまで磨けるかが勝負だと思います」
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