ダルビッシュの「おうち時間」に学べ!“足し算”で「隙間時間の効率を最大化」

2020年05月08日 06:00

野球

ダルビッシュの「おうち時間」に学べ!“足し算”で「隙間時間の効率を最大化」
カブスのダルビッシュ(AP) Photo By AP
 新型コロナウイルス感染拡大の影響により大リーグの開幕も大幅に延期されている。先が見えない状況でも、カブスのダルビッシュ有投手(33)はアリゾナ州の自宅でシーズンへの準備を進めつつ、多忙かつ充実した「おうち時間」を過ごしている。その秘けつを、ダルビッシュが本紙に寄せたメッセージを基に探った。(大林 幹雄、奥田秀樹通信員)
 今月1日。ダルビッシュがYouTubeとSNSを通じ、希望者に和牛をプレゼントする「和牛は俺に配らせろ!」企画をスタートさせた。安倍政権で一時浮上した「お肉券」配布プランを想起させるタイトル。1万円の和牛セットを毎月10人に贈る内容だ。緊急事態宣言により困窮している飲食店を自腹で支援すると同時に、外食を我慢している人たちを応援する目的。「おいしい食べ物を食べて乗り切りましょう!」と呼び掛けた。

 かねて、SNSやYouTubeを駆使した情報発信には精力的。4月末にはグーグル検索で肩書に「YouTuber」と表示されて話題を呼んだ。コロナ禍の現状でも、トレーニングを継続させつつ情報発信や社会貢献に取り組んでおり、全体的な自粛ムードの中で活発ぶりが際立って見える。自身は本紙に「元々ボーッとするのが苦手なだけです」と冷静に語ったが、「おうち時間」の有効活用法について問われると、興味深い答えが返ってきた。

 「時間ってないようで使い方によってはあるものだと思うので、隙間時間の効率を最大化する努力はしています」

 隙間時間の効率を最大化する上で、ダルビッシュに特徴的なのは「足し算」だ。YouTubeでは自身の野球の技術や体験などをファンに発信して共有するとともに、広告などによる収益を寄付している。4月24日には国立がん研究センターと母子家庭を支援するNPO法人に合計約471万円を寄付したことを明かした。また、現在ハマっているゲーム「プロスピ(プロ野球スピリッツ)」のプレー動画を公開しつつ、登場する選手との裏話などを披露。さらに、リアルタイム対戦では1勝につき1万円を寄付する予定だ。アスリートとしての時間、情報発信の時間、自由時間のそれぞれがリンク。社会貢献活動にもつながっている。

 コロナ禍に関しては1月の段階から感染リスクを想定。「先を考えて相手が分からない間にリスクを取り除くことができます」と知人の来訪を断った。3月に自身にせきなどの症状が出た時は、キャンプ施設に入る前にチームドクターに確認。クリニックで検査を受けて練習を休んだ。

 非常事態にも慌てずに冷静に行動できる裏には、さらに悪い状態をイメージし、現状に対処するという思考法がある。例えば、4月5日にはツイッターでこう吐露した。「第3次世界大戦で今住んでるエリアにバンバン爆弾落ちてきていることを想像してほしい。食べ物がない、いつ死ぬか分からない。。それに比べたら自粛で家にいるぐらい楽な気がしてくる」。右肘のじん帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)から復帰後の16年や、その2年後の18年にさまざまなコンディション不良に悩まされ、乗り越えてきた経験も役立っているように見える。

 昨季の後半戦13試合で防御率2・76、奪三振率13・00をマークするなど、30代半ばを前に進化への手応えを得た。米メディアの間では、サイ・ヤング賞候補にも挙げられている。過去最高の形で迎えられそうだったシーズンの短縮が避けられない状況でも、あくまで前向き。そんな右腕が現在の時間を有効活用するため、ファンにメッセージを寄せた。

 「今しかできないことってかなりあるはずなので、それを見つけて没頭すること。ネガティブなことには振り回されないこと」

 ダルビッシュの「今」は、まさにこれを体現している。

 ○…ダルビッシュの和牛プレゼント企画は毎月1~5日に実施され、終了月は未定。サポートスタッフのダース・ローマシュ匡(たすく)氏、塚本武紘氏のツイッターにコメントして応募する。07~11年に日本ハムでプレーしたダース氏は「5月は2人合計で2000件以上の応募を頂きました。来月以降もお待ちしています!」と呼び掛けた。

 ○…大リーグ各球団は、公式サイトなどで子供向けの「おうち時間」活用企画を紹介。ダルビッシュやヤンキースの田中、エンゼルスの大谷は、塗り絵の「お題」として登場している。クイズやゲームが多いが、ドジャースやアスレチックスは読書企画を実施。大リーグ全体ではオンライン教育プログラムも展開している。
 【記者フリートーク 大リーグ担当・奥田秀樹通信員】4年前を思い出した。16年3月。ダルビッシュは、右肘手術からのリハビリの1年間をこう振り返っていた。「凄く良かったですね。1年間野球と離れて」。トレーニングや栄養学の勉強に本格的に励み、知識が増えたという。多くの選手は術後のストレスなど、ネガティブな話が多くなりがちだが「この1年で何ができるんだろうと考えた」とサラリと言った。そんな彼だから、異常事態でもポジティブに向き合えるのだと思う。
 もう一つは、子供の存在。以前、自身の内面の劇的な変化について説明してくれたことがあった。「子供が生まれて今まで持っていなかった感情が生まれた。野球で得られることは自己満足の部分が強い。でも人生は自己満足でない部分が多い。子供を育てるのもそう」。マウンドに立てず、自宅で過ごしている現在でも、同様に自宅で待機している人たちに有益な情報を発信し、社会貢献活動にも熱心だ。自己満足に陥らず、幅広い視野を持っているからこそ、それができる。

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