ダルビッシュ、パドレス移籍会見で涙した理由 不振時にあったシカゴの記者とのやり取りとは
2021年01月03日 06:00
野球
![ダルビッシュ、パドレス移籍会見で涙した理由 不振時にあったシカゴの記者とのやり取りとは](/baseball/news/2021/01/03/jpeg/20210102s00001007301000p_view.jpg)
「ブルースさんは、僕が(移籍)1年目とか2年目の途中まで全然だめでチーム内で浮いているんじゃないかと思っている時、いつも僕のところに来て、手を持って(握手して)話してくれて。それを凄く思い出した」
レバイン氏に心当たりはあった。移籍1年目の18年6月25日、インディアナ州サウスベンド。右腕を痛めていたダルビッシュが傘下1Aでリハビリ登板した時だった。
5回を投げて3安打1失点、5三振、無四球の好投。多くの現地の記者は、この結果でメジャー復帰が決まったと考えた。しかし、ダルビッシュ自身は腕の違和感が消えず、その本音を吐露。レバイン氏は真摯(し)な態度でその声に耳を傾けていた。
18年、ダルビッシュは6年総額1億2600万ドル(当時約137億3400万円)の大型契約でカブスに移籍したが、その時点で1勝3敗、防御率4・95と不振。2度、故障者リストに入っていた。5月29日に出た磁気共鳴画像装置(MRI)検査の結果では特に組織の損傷は見られず、一部のメディアは「繊細すぎるんじゃないか」と見ていたが、レバイン氏は違った。
「私も6月25日に取材する前は繊細すぎるんじゃないかなと思っていた。だが、あの登板の後、彼は“100%ではない”と数回繰り返した。私は彼の口ぶりから、何かがおかしいのは明らかだと信じた」
登板後の取材を終えると、ダルビッシュはレバイン氏へ歩み寄り、こう言った。「“あなたの口ぶりから、自分の言葉を本当だと信じてくれているのが分かった。アスリートというより、一人の人間として話を聞いてくれてうれしい。感謝している」。後日、再検査で右肘の炎症などが判明。違和感の要因が繊細さだけではなかったことが証明された。
レバイン氏はシカゴで39年の野球記者経験がある。サミー・ソーサ、マグリオ・オルドネスらラテン系の選手が言葉や文化の違いに苦しむ場面も、ジョン・レスターやジェーソン・ヘイワードらが大型契約で人気球団のカブスに加入して受ける重圧も、理解していた。ダルビッシュについては「頭が良すぎるというか、周りをがっかりさせたくないと気を使いすぎてしまったのでは」と話した。
レバイン記者はこのマイナー登板以降も、クラブハウスでダルビッシュの姿を見かけると、歩み寄って握手を交わし、言葉を重ねた。「深い話ではない。家族はどう?とか、シカゴでの暮らしはどう?とか、そんな感じだけどね」。ちょっとしたコミュニケーションの積み重ねが2人の信頼関係を深めた。
ダルビッシュは言う。「いろんなやり取りを覚えています。記者の人たちにも助けられた。本当に周りに助けられた3年だった。息子もシカゴを離れることで泣いているけど、僕はその100倍くらい泣いている」。日本選手初の最多勝、サイ・ヤング賞投票2位という勲章にも代えがたい、シカゴで得た大きな財産だった。(奥田秀樹通信員)
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