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白血病克服し母校と対戦、そして勝利 兵庫工・伊勢田部長“球音”かみ締め「楽しいですね」

2021年07月11日 19:13

野球

白血病克服し母校と対戦、そして勝利 兵庫工・伊勢田部長“球音”かみ締め「楽しいですね」
<兵庫大会 兵庫工・姫路工>試合前、3人であいさつする(左から)平川記録員、兵庫工・松岡監督、伊勢田部長(撮影・成瀬 徹) Photo By スポニチ
 【兵庫大会 2回戦   兵庫工9―3姫路工 ( 2021年7月11日    明石トーカロ )】 万感の思いで勝利の瞬間を味わった。母校を相手に、投打のかみ合う快勝で3回戦に進出。兵庫工・伊勢田修平部長(26)は「一番、勝ちたかった相手なので嬉しいです」と言葉をかみしめた。
 困難を乗り越え、そして努力を重ね、高校野球の舞台に戻ってきた。姫路工では堅守の内野手として1年秋からベンチ入り。甲子園を目指して全力で白球を追った。しかし2年の夏に予期せぬことが起きた。

 「自覚はなかったし、言われてみれば、頭が痛い時があるな、くらい。たまたま見つかった感じでした」

 病院での検査の結果、急性骨髄性白血病が判明。約8カ月の入院を余儀なくされた。

 それでも心が折れることはなかった。翌年5月に退院。夏の大会に間に合わすため、抗がん剤治療の副作用と戦い、リハビリに励み、ベンチ入りメンバーを勝ち取った。だが夏の兵庫大会初戦・神港学園戦の前日に体調を崩して入院。出席日数不足で留年したため、2年生で迎えた“最後の夏”はグラウンドに立つことさえもかなわなかった。

 3年時は記録員、ノッカーとしてチームをサポート。その間に野球への思いは、さらに強まった。「もう1回、高校野球の舞台に戻りたかった」。卒業後は近大工学部に進学。工業の教員免許を取得し、19年に兵庫工に赴任。昨秋に野球部長に就任した。

 責任教師として迎える初めての夏。普段からともに汗を流す生徒達には経験をもとに、信念を伝えてきた。

 「結果がうまくいかなかったり、思うようにならないことはある。それでも自分のやってきた事を信じて、できることをしっかりと覚悟を決めてやる。思い切ってやることが大事なんだ」

 試合前には外野ノックで士気を鼓舞。試合中はベンチで立ち続け、ナインをサポートした。「思い切って、やっていたと思います」。グラウンドで躍動する選手の姿が頼もしく、まぶしかった。

 遊撃手の広瀬大空主将(3年)は「伊勢田先生は守備がうまいので、教えてもらっています。僕たちに寄り添ってくれるし、落ち込んでいる時とか、励ましてくれる」と信頼を口にした。同部長は「一番の目標は甲子園ですが、そこまで考えることなく、1個1個、勝っていきたい」と言う。困難を乗り越え、様々な経験を経て、戻ってきた高校野球の舞台。試合後にかみしめるように語った「楽しいですね」。一言が全てだった。

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