久我VS和気の日本タイトル戦、ハイリスクでも意味があるこれだけの理由
2018年05月19日 10:30
格闘技
実は、現在のスーパーバンタム級は世界戦が組みやすい状況とは言えない。IBF王者・岩佐亮佑(セレス)と、最近2試合を日本で戦っているWBA王者ローマン(米国)は、それぞれ強敵との指名試合が指示されている。WBC王者バルガス(メキシコ)とWBO王者ドグボエ(ガーナ)は米大手プロモーションと契約しているため日本に呼ぶことが難しく、敵地での挑戦にも知名度が必要となる。ドグボエが希望する統一戦の方向に向かうと、世界戦実現にはさらに時間がかかる。世界挑戦がほぼ内定していた畑山と異なり、「久我VS和気」はハイリスクの一方、ハイリターンは保証されていない。
だが、事実上の挑戦者決定戦だった20年前の畑山―コウジ以上に、久我と和気が戦う意味はある。現在の国内スーパーバンタム級は2人以外にも、世界再挑戦を狙う東洋太平洋王者・大竹秀典(金子)、松本亮(大橋)、亀田和毅(協栄)、若手の丸田陽七太(森岡)、水野拓哉(松田)と有力選手が多い。彼らが世界上位ランカーを破って王者に対戦をアピールするのならともかく、国内でのサバイバルすら避けていては、いざ世界挑戦となってもファンの理解は得られまい。また、亀田和を除くと一般への知名度が低く、世界を獲ったとしても「名前も覚えてもらえない王者」となる恐れがある。当座のハイリターンは望めなくとも、強い者と戦えばモチベーションや高い質の練習が保たれるし、名勝負で“ストーリー”をつくることは世界への機運を高めることにもなる。何よりも、国内プロボクシングの活性化に欠かせない、日本タイトルマッチの地位向上につながるはずだ。(スポーツ部専門委員・中出 健太郎)