「光る君へ」実資の愛娘“かぐや姫”千古の母役「誇らしく」考証&演者“異色の二刀流”千野裕子語る裏側

2024年11月08日 11:00

芸能

「光る君へ」実資の愛娘“かぐや姫”千古の母役「誇らしく」考証&演者“異色の二刀流”千野裕子語る裏側
大河ドラマ「光る君へ」第31話。百乃役で初登場した千野裕子。古文訳考証とキャストで2度、クレジットされた(C)NHK Photo By 提供写真
 女優の吉高由里子(36)が主演を務めるNHK大河ドラマ「光る君へ」(日曜後8・00)は今月3日、第42回「川辺の誓い」が放送され、日本古典文学の研究者で女優の千野裕子(37)が藤原実資(秋山竜次)の召人(めしうど)・百乃(ももの)役で再登場した。今作は「古文訳考証」「資料提供」を担当し、スタッフも兼任。異色の“二刀流”の舞台裏を聞いた。
 <※以下、ネタバレ有>

 「ふたりっ子」「セカンドバージン」「大恋愛~僕を忘れる君と」などの名作を生み続ける“ラブストーリーの名手”大石氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ63作目。千年の時を超えるベストセラー「源氏物語」を紡いだ女流作家・紫式部の波乱の生涯を描く。大石氏は2006年「功名が辻」以来2回目の大河脚本。吉高は08年「篤姫」以来2回目の大河出演、初主演となった。

 千野が演じた百乃はドラマオリジナルのキャラクターで、召人とは平安時代、貴人に仕えて寵愛を受けた女性。初登場は第31回「月の下で」(8月18日)。実資が藤原公任(町田啓太)の屋敷を訪れ、昇進しそびれた公任を激励したが、主たる目的は百乃との密会だった。同回はオープニングタイトルバックで「古文訳考証 千野裕子」「百乃 千野裕子」と2度、クレジットされた。

 千野の大河出演は黒田長政の妻役を演じた「功名が辻」、孝明天皇の密書を運ぶ女官役を演じた「八重の桜」(13年)に続き、11年ぶり3回目。過去2回はスタッフを兼ねておらず“二刀流”は今回が初となった。研究者としては、平安時代を中心とした王朝物語文学が専門。23年からは学習院大学文学部准教授(日本語日本文学科)を務める。

 過去にスタッフとキャストを兼任したのは「西郷どん」(18年)の迫田孝也(薩摩ことば指導、江藤新平役)、「どうする家康」(23年)「光る君へ」の友吉鶴心氏(芸能考証、どうする家康:琵琶法師役、光る君へ:役名なし)らがいる。

 千野は「役者としては、大河ドラマへの出演は本当に光栄なことですし、素直にとてもうれしかったです。研究者としては、平安時代の物語文学に登場する“男性貴族と性愛関係にある女房”が研究対象の一つでもあり、ちょうどそんな論文を書いた直後でもあったので“ピッタリすぎる”とビックリしてしまいました。これは研究者仲間に相当イジられるだろうなと思いました(笑)」と研究対象ど真ん中の役柄との“二刀流”に喜びと驚き。

 この日の第42回は、実資の2歳の愛娘・千古(ちふる)の母として再登場した。

 実資「(千古をあやし)ぶるぶる、バ~」

 千古「面白い」

 百乃「殿、そのように妙なこと、教えないでください」

 第31回の撮影時に再登場の設定を聞かされ「ああ~!『大鏡』で実資が“かぐや姫”と呼んで溺愛していたという、あの娘か~と心躍りましたね。『光る君へ』の百乃の設定とは少し異なりますが、千古の母についても『大鏡』や『栄花物語』に出てきます。実資が千古を溺愛していたというのは、この時代に詳しい方には有名な逸話だと思うので“私が千古の母です”とちょっと誇らしい気持ちになりました」と述懐。

 「撮影では、秋山さんが子役さんにとても優しくて、待機中もずっと家族みたいな空気感でした。あの装束で子どもを抱っこするのはなかなか大変だったので、古典文学を読む目がまた一つ変わりそうです。授業で子どもが出てくる場面を扱う時に“私もやったことがあるから分かるんだけどね”と学生に言えるようになったなと思いました」

 古文訳考証としては、まひろ(吉高由里子)が創作した物語「カササギ語り」などの古文訳を担当。「これらは『光る君へ』のオリジナル作品なので、現代語で書かれたものを頂いて、それを古文に訳しました。仕事柄、古文を現代語に訳すことは日常的にありますが、逆の作業は初めてだったので、慣れるまでにちょっと時間がかかりました。紫式部の作風に近くなるように、所々に『源氏物語』に出てくる表現を散りばめてみたりもして、楽しかったです」。ちなみに「源氏物語」の現代語訳は平安文学考証の高野晴代氏(日本女子大学名誉教授)が担当している。

 資料提供は、劇中に登場する和歌の選定を中心にリサーチを担当。まひろらが詠むものはもちろん、台詞にならずとも小道具の手紙類に書かれた和歌も、同時代のものを中心に様々な和歌集からリストアップした。

 第31話の撮影時は「ちょうど担当案件があって、控室に『和泉式部集』を持ち込んで、衣装のままスタッフとしての作業もしていました(笑)」と明かした。

 作・演出を務める劇団「貴社の記者は汽車で帰社」は来年、旗揚げ20周年。日本古典文学を舞台化し、今年9月の「紫式部の日記<モノガタリ>」に続き、来年2月には新作「源氏物語の続きがほしい!」(新宿・絵空箱)が控える。

 「これからも古典文学とエンタメの間を行き来して、取りつげるような存在になれたらなぁと思っています。研究者としてだけでなく、演者としてや劇団活動でも見えることもあると思うので、そうした視点から、機会があればまた今回のようなお手伝いができたらうれしいです。何より平安時代の文学が大好きなので、歴史を扱った創作といえば戦国時代と幕末が強いですけど、そこに平安時代も食い込めるようになってほしいと思います」

 ◇千野 裕子(ちの・ゆうこ)1987年(昭62)1月12日生まれ、東京都出身。中学・高校と学習院に在籍し、演劇部に所属。2009年、学習院大学文学部(日本語日本文学科)を卒業。16年、博士(日本語日本文学)の学位を取得した。女優としても活躍し、連続ドラマ「わるいやつら」(テレビ朝日)「猟奇的な彼女」(TBS)などに出演。主な著書に「女房たちの王朝物語論」(青土社)などがある。

この記事のフォト

おすすめテーマ

芸能の2024年11月08日のニュース

特集

芸能のランキング

【楽天】オススメアイテム