【G1温故知新】1987年皐月賞3着 マティリアル

2017年04月12日 06:30

競馬

【G1温故知新】1987年皐月賞3着 マティリアル
在りし日のマティリアル Photo By スポニチ
 G1の過去の勝ち馬や惜しくも力及ばなかった馬、記録以上に記憶に残る馬たちを回顧し、今年のレースの注目馬や見どころを探る「G1温故知新」。第16回は1987年のスプリングSを奇跡的な末脚で制覇し、続く皐月賞において1番人気に推されるも3着に敗れ、後に悲劇的な最期を遂げたマティリアル。
 3戦無敗の強豪牝馬ファンディーナの参戦により、がぜん盛り上がりを見せている今年の皐月賞。抜きん出た実績を持つ牡馬が存在しないという事情もあって、この“将来の名牝”は大いに人気を集めることだろう。そして単なる“にぎやかし”で終わる馬とも思えない。今年の3歳牝馬のレベルに鑑みれば、きっと好勝負になるはずだ。

 対する牡馬勢の大将格となりそうなのは弥生賞馬カデナだろうか。確かに弥生賞の内容は悪くなかった。前半5Fが63秒2という緩い流れにも負けず、中団追走から見事差し切ったレースぶりには可能性が感じられる。同じくTRのスプリングSを制したウインブライトはあと1F延びてどうかという懸念があるし、ホープフルS勝ちのレイデオロは過去にほぼ好走例のない昨年暮れからのぶっつけ本番だ。出走馬中、最もマイナス材料の少ない馬はカデナに違いない。

 カデナは昨年のダービー馬マカヒキと同配合である。血統背景も含めて期待できる存在と言えそうだが、このプロフィールを見て思い出した馬がいる。1987年のスプリングS優勝馬マティリアルだ。

 カデナがマカヒキと同配合ならば、1984年生まれのマティリアルは3歳年上のクラシック三冠馬シンボリルドルフと同配合であった。ルドルフと同じくシンボリ牧場出身の、文字通りの“好素材”として注目を集めていたマティリアルは、1986年10月にデビューするとトントン拍子に2勝を挙げ、翌87年3月末のスプリングSに出走する。手綱を取ったのはシンボリルドルフの主戦を務めた岡部幸雄。岡部の“英才教育”により磨かれた逸材は、このレースにおいて素晴らしい走りを披露するのである。

 メリーナイス&ゴールドシチーという東西2歳チャンプが名を連ねる中、堂々の1番人気に推されたマティリアル。レースぶりは圧巻だった。道中は12頭立てのシンガリを追走。それもブービーの馬からかなり離された位置だ。4コーナーを回り、直線入口に至っても後ろから数えて3番手といったポジション。人気薄の逃げ馬が意外なほど粘り、前々で勝負した馬たちで大勢決したかと思われたが、残り100メートルほどの地点からマティリアルが急襲。結果、上位の様相はゴール前では一変していた。レース後の岡部は珍しく興奮気味に「ミスターシービーしちゃった!」と言い放ち、有力馬たちをなで斬りにしたマティリアルは意気揚々と皐月賞へ向かった。

 ところがスプリングS以降は期待されたような成績を残せなかった。皐月賞は3着、ダービーに至っては18着大敗。当時話題の映画「優駿」の“主役”の座もメリーナイスに奪われた。同年秋も不完全燃焼に終わった彼は、古馬になってからも不甲斐ない競馬を続ける。そして、2年半ぶりに勝ち星を挙げた1989年9月の京王杯オータムHのゴール後に骨折。その4日後に短い生涯を閉じた。

 マティリアルは気性的に繊細かつ体質の弱い馬だった。鞍上の岡部は春2冠を連戦したローテーションを後悔していたという。偉大なる三冠馬の幻影を追い、マティリアル自身に適合したローテを組まなかったことが悲劇の始まりだったのかもしれない。

 カデナはマカヒキと同じく弥生賞馬としての地位を得た。しかしながら“先輩”が歩んだ道をなぞる必要はない。マカヒキとは人的背景が違うだけに杞憂かもしれないが、陣営には彼の身の丈に合ったレース選びをして欲しいものだ。加えて、彼が万全な状態で春2冠に挑めることを切に願う。

(文中の馬齢表記は新表記で統一)

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