【きさらぎ賞】ランドオブリバティ、ハミ替えて快走!特殊馬具で“悪童ぶり”封印
2021年02月04日 05:30
競馬
追い切りでアピールしたのは優等生の走り。主戦・三浦を背にWコースでダイワダグラス(5歳3勝クラス)の1馬身後方をピタリと折り合いながら追走していく。3、4角をコーナリングの模範を示すようにブレなく回った。直線入り口で手前(軸脚)を替えると馬なりのまま半馬身前に出た。「気分良く走っていたし、やんちゃな少年から少しずつ大人になってきた面もある。もちろん、この馬具の効果も見込んでいます」と鹿戸師は続けた。
米国から伝わったジェーンビットには逸走防止の3つの効果がある。
(1)ハミ身(馬がくわえる金属棒)がノーマル型のように中折れしていないため左右に動かない。
(2)ハミ身が長いためテコの原理が働き、左右に動こうとする馬を引き戻す。
(3)下顎に付いた金属枠でハミ身を固定できる。
「やっぱり、このハミだな」。“馬具博士”と呼ばれる同師が馬具資料の山から顔を上げたのはホープフルSの直後だった。2番人気に支持されたが4角で外ラチまで逸脱。3週間出走停止の制裁を科された。更生するのに最も効きそうな馬具がジェーンビットだった。長所は短所という。ハミが口に固定されるため掛かり癖のある馬には逆効果だが、ランドオブリバティにその懸念はない。すぐに馬具店に発注し、年明けから着けた。「角馬場を8の字に周回させたり、毎日、このハミを着けていろいろな調教を重ねてきた」と馬具博士は言う。
1月20日には平地調教再審査にも合格。実戦を想定した1週前の集団調教でも優等生のようにコーナーを正確に周回し、リハーサルを完了した。「前回はご迷惑を掛けてしまいましたが、厩舎一丸となって調教してきました。あとはレースで成果を出せるようにエスコートできれば」と三浦も汚名返上を期す。ハミなくして乗馬なし。クラシックロードを真一文字に走らせるのは、紀元前から改良を重ねた馬具のニューモデルだ。
《ステイゴールドもハミ交換で“変身”》種牡馬としてオルフェーヴルやゴールドシップなどの個性派を送り出したステイゴールドも現役時、ハミ交換で変身した一頭。デビュー2戦目にラスト失速して最下位16着。3戦目は4角で逸走し競走中止。その後、ランドオブリバティと同様、制御力の高いハミに変更して調教再審査をパスすると、次戦から2→2→1→1着とレースぶりが一変した。気性が改善した晩年には再びノーマルのハミに戻し、香港ヴァーズを制してG1馬の仲間入りを果たした。
▼ジェーンビット 米国で考案された斜行や逸走矯正用のハミ。日本では使用例が少ないが、11年の京都牝馬S、ショウリュウムーンが初着用でモタれ癖を封印して快勝した。美浦トレセン近くに店を構える「ウツミ馬具」の内海雅之社長は「日本で使用されるようになってから10年ほどです。スライドビットのように矯正力が強い半面、操縦性が低い面もあります。馬によってはパシュファイヤー(目を覆う網状の馬具)も逸走防止に効果的です」と語っていた。