蛯名正義師 藤沢イズムを継承!「管理馬が楽しく走れるように」
2022年03月02日 05:30
競馬
1日付で藤沢和厩舎所属だった46頭のうち33頭が蛯名正厩舎へ。グランアレグリア、レイデオロを手掛けた百戦錬磨のスタッフの多くも引き継ぎ、師から「頼むぞ」と激励された。調教方法は前厩舎のものを踏襲。「これ以上の人たちはいない。ベースは変えずにやっていく。俺がああだこうだ言うより、今まで通りのことをしっかりやっていく方がいいと判断した」。
歴代4位2541勝の名手が我を捨てたのは、藤沢和雄元調教師がつくり上げたチームが「日本一」だという確信があるから。89年青葉賞ロンドンボーイ(2着)の初タッグから、引退レースとなった21年中山記念ゴーフォザサミット(4着)まで33年間、騎手として藤沢イズムの凄みを味わった。G1初制覇も藤沢和厩舎のバブルガムフェローだった。厩舎解散までの最後の4年間は、すぐ隣で名伯楽の生きざまを目に焼き付けた。「積み重ねを妥協しない」姿に薫陶を受けた。
「ハッピーピープル メーク ハッピーホース」。おおらかに笑っていられる人間が幸せな馬をつくれる。藤沢和厩舎の代名詞といえる道しるべも継承した。濃紺の厩舎ジャンパーに身を包んだスタッフは、開業初日の緊張感の中でも笑顔を絶やさない。その中心に蛯名正師がいた。「管理馬が楽しく走れるようにしていきたい」。調教師・蛯名正義のモットーだ。
今週末の出走予定は0。「ゆっくり調教していきます。馬の状態が良ければ、来週から使っていきたい」とはやる気持ちをいささかも感じさせない。目先の1勝ではなく、あくまで馬優先。「健康で丈夫な馬を育てていきたい。藤沢先生のように…」。“最後”の弟子が、確かな足取りでレジェンドトレーナーの背中を追いかけ始めた。
《騎手時代逃したダービー&凱旋門賞V狙う》ファンが待望するのは蛯名正師が騎手時代に果たせなかった悲願の成就。25回挑戦した日本ダービーは、12年フェノーメノ&14年イスラボニータと2度の2着が最高だった。日本競馬界の夢でもある凱旋門賞でも、99年エルコンドルパサー、10年ナカヤマフェスタで日本調教馬、日本人騎手最高である2着に2度入った。蛯名正師は「手が届きそうなところまでいって勝てなかったが、自分として精いっぱいやったので悔いはない」と騎手時代の完全燃焼を強調しつつ、「騎手として届かなかったレースに、調教師としてもう一度チャレンジできれば」と熱意を燃やしている。
また、騎手学校の同期である武豊とのタッグも実現すれば大きな話題となる。蛯名正師が「豊とのコンビは(ファンも)楽しみにしてもらっていると思う」と話せば、武豊も「今後は一緒に勝っていく関係性も楽しみ」と夢をふくらませている。
◇蛯名 正義(えびな・まさよし)1969年(昭44)3月19日生まれ、北海道出身の52歳。87年騎手デビュー。同期は武豊。96年天皇賞・秋(バブルガムフェロー)でG1初制覇。エルコンドルパサー、トロットスター、マンハッタンカフェ、マツリダゴッホ、アパパネなどとのコンビで競馬人気をけん引した。凱旋門賞は2度の2着。調教師免許取得に伴い、昨年2月いっぱいで騎手引退。通算2万1183戦2541勝。JRAG1・26勝。3月1日付で美浦に厩舎を開業。血液型A。