引退馬を知ってほしい和田竜の動画への思い

2023年07月26日 10:15

競馬

引退馬を知ってほしい和田竜の動画への思い
笑顔の和田竜二騎手 Photo By スポニチ
 ▼日々トレセンや競馬場など現場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は栗東取材班の坂田高浩(38)が担当する。昨年、和田竜二(46、写真)が開設したYouTubeチャンネル「和田竜二の引退競走馬を追う!!」に注目。開設の経緯や撮影のこぼれ話、活動を通して感じたことなどを取材した。
 昨年11月に「和田竜二 引退競走馬を追います!」と題した1本目の動画をアップして約8カ月。現役騎手として忙しい日々を過ごしながら合間を縫って動画制作に取り組み、引退競走馬のセカンドライフに携わる人々や施設を取り上げ、現状を伝えている。滋賀県のTCCセラピーパークや兵庫県の三木ホースランドパーク、今月アップした最新動画では北海道のヴェルサイユリゾートファームを訪れた。他にはRRC(引退競走馬杯)という、乗馬としてリトレーニングを積んだ引退馬が出場できる競技会の振り返り企画も行っている。

 和田竜にチャンネル開設の経緯を聞くと「JRAを含めた引退馬に関する検討委員会に出席するようになり、自分自身も現状をよく分かっていないと感じたし、一般の方に知ってもらえれば、と思って」と説明。近年、引退馬支援の議論が活発化する中で何か協力できれば、と考えるようになったという。ただ、リトレーニングをするにも受け入れ先の施設や人員の確保など課題は多く「乗馬界がもっと盛り上がってほしい」。裾野を少しでも広げるための取り組みだ。

 スケジュールの都合上、一人で現場を訪れ、撮影したこともある。昨年12月にアップした、ナイスネイチャに会いに渡辺牧場(北海道浦河町)に行った回だ。撮影は手探り状態。牧場の説明から思い出話まで、視聴者目線で分かりやすく伝えるために歩きながら「何十回、撮り直したか…」と苦笑い。動画内で「青春時代に一番好きだった馬」と思いを語る場面はジーンとなった。30年ほど前、少年時代に松永善晴厩舎の厩務員だった父・守さんに連れられ、厩舎に足を運んだ際にナイスネイチャに触らせてもらった。担当の馬場厩務員にお小遣いをもらったこぼれ話も…。格好良くて、いつも一生懸命走る馬。和田少年が騎手の道に進むきっかけになった。再会から約半年後の5月30日、ナイスネイチャは35歳で大往生を遂げた。「(撮影は)門別に乗りに行った時に時間を取れて、いいタイミングだった。晩年だったから(引退馬協会の)会員さんしか見に来られなかったみたいだけどね」と振り返り「養老牧場にいる馬はのんびりしていたし、幸せなのかなと思う」としみじみ語った。

 YouTubeで発信するからには、たくさんの人に見てもらいたい気持ちがある。「乗馬の大会は面白い。ただ、土日だと僕らは見に行けないし、馬術はなかなか説明できないところもある」と試行錯誤を続けている。乗馬になじみのない視聴者にも興味を持ってもらうために工夫を重ねて発信。「スポーツ紙の皆さんにもやってもらって」と笑いつつ「(動画を見て)何か感じてもらえれば」と続けた。レースで鼓舞するだけでなく、引退してからも追う。馬の生き方について考える人が一人でも増えれば、と願っている。

 ◇和田 竜二(わだ・りゅうじ)1977年(昭52)6月23日生まれ、滋賀県出身の46歳。96年に栗東・岩元市三厩舎所属でデビューし、現在はフリー。JRA通算2万699戦1459勝。デビュー年のスポニチ賞ステイヤーズS(サージュウェルズ)でJRA重賞初制覇。G18勝を含むJRA重賞通算50勝。同期に福永祐一(現・技術調教師)、古川吉洋らがいる。

 ◇坂田 高浩(さかた・たかひろ)1984年(昭59)11月5日生まれ、三重県出身の38歳。07年入社で09年4月~16年3月まで中央競馬担当。その後6年半、写真映像部で経験を積み、昨年10月から再び競馬担当に。

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