【藤田晋オーナー語る(上)】ケンタッキーD フォーエバーヤングで日本馬初快挙へ「将来ウマ娘で…」

2024年05月03日 05:30

競馬

【藤田晋オーナー語る(上)】ケンタッキーD フォーエバーヤングで日本馬初快挙へ「将来ウマ娘で…」
J1町田のマフラーを胸にフォーエバーヤングの写真パネルとムチを持って笑顔の藤田氏(撮影・白鳥 佳樹) Photo By スポニチ
 【藤田晋オーナーにインタビュー(上) 】 「スポーツで最も偉大な2分間」と言われる米国競馬のG1ケンタッキーダービーは日本時間5日午前7時57分にゲートイン。デビュー5戦全勝で日本馬初勝利に挑むフォーエバーヤング(牡3=矢作)を所有するのは「ウマ娘」で知られる、サイバーエージェント社長の藤田晋氏(50)。サッカーJ1で快進撃を続けるFC町田ゼルビアのオーナーも務める同氏に、決戦直前の思いを聞いた。(聞き手・田井 秀一)
 ――UAEダービーで無傷5連勝。オーナーも初めて海外で愛馬のレースを観戦した。

 「格別でした。期待して見に行ってガッカリして帰ることが多いので、ドバイだと帰り道がきついな…と思っていましたけど。日本を代表して勝ったような気持ちになれて特別な1勝でした」

 ――今年は国内に3歳ダート3冠路線が新設。海外転戦を選択した要因は。

 「最終的には矢作先生のご意見を参考に。国内も初年度だから注目されますし、大井競馬場は近い。でも“海外のビッグレースを勝てば種牡馬としての価値が違ってくる”と」

 ――今週末はいよいよケンタッキーダービー。米国では「スポーツで最も偉大な2分間」と呼ばれる。

 「武豊さんの話では“実際に行ってみたら凱旋門賞より華やかだし、ホスピタリティー等の面では世界で一番凄いと思えるレースだ”と。過去の映像を見ましたけど、何を着ていけばいいか分からないです(笑い)」

 ――現地でもV候補の一頭という評価。

 「とんでもないことになっちゃったな、と。さすがに簡単に勝てるとは思っていないですけど、有力馬として出られるだけでも素晴らしいことです」

 ――勝算は。

 「これまで全て違う馬場で勝ってきていますし、前走のドバイは安心感のある勝ち方でした。矢作先生によれば、チャーチルダウンズ競馬場の適性もありそう。話を聞いていると記念受験という雰囲気は全くないです」

 ――勝てば歴史を塗り替える一戦。

 「万が一ケンタッキーダービーを勝って国内に戻ってきたら、日本の競馬界的には何が起きたんだってパニックになりますよね。大谷翔平選手や松山英樹プロが帰ってきた、みたいな。もしそうなれば本当に気分が良いし、馬の知名度も一気に上がるはず。将来、ウマ娘になるにしても人気が出るでしょうから、ぜひ勝ちたいです」

 ――大谷翔平といえば二刀流。いずれ芝を使うプランは。

 「与太話で矢作先生としたことはありますけど、今は緊迫したレースが続いているので。個人馬主なのでそういう意味では自由度は高いですけどね。昔、障害のオジュウチョウサンが有馬記念に出て盛り上がりましたけど、本当にやるかどうかは空気を見て、ですね」

 ――馬主デビューからの3年間を自己採点すると。

 「これは難しい。順調な感じはしますが、期待を上回るほどでもない。調教評価でいえば“6”。“7”までいくと好調なイメージがあるので」

 ――馬主業は仕事ではなく娯楽と表現されてきたが。

 「結果的に仕事に寄ってきますね。元々ウマ娘がありましたけど、やはりシナジー(相乗効果)は生まれています。サッカーのオーナー業もいざ始めればその周辺でビジネスが広がっていきました。どちらも無邪気に自分が一番好きなことを真剣にやっているのがいい方向に出ているのかなと思います」

 ――相乗効果という意味ではディープインパクトのような、誰でも知っている馬の登場が理想的。

 「凄いのが1頭出るとレースの賞金も高いですし、種牡馬としても夢がありますし、“確変”があるのが分かりました。フォーエバーヤングにはその価値が出てきていますから次も期待しています。個人的には目標とする(ディープを所有した)金子真人さん、(冠名サトノの)里見治さんのように大物馬主として競馬界で長くやりたい思いはあります」

 ――馬主としての夢、目標は。

 「一番勝ちたいレースは有馬記念、次にダービーですけど、目標はウマ娘に自分の馬が出ること。そうなれるような名馬が出てほしいですね」

 ※藤田晋オーナー語る(下)に続く。

 ≪米3冠続戦も≫フォーエバーヤングは米国3冠競走を続戦する可能性も。藤田オーナーは「国内はしばらく出られるレースがないので、そのまま海外で頑張ってもらうことになると思います。力関係が全く分からないので、あくまで今回の結果次第ですが」と展望する。16年にはラニが日本調教馬として初めて3冠皆勤(ケンタッキーダービー9着→プリークネスS5着→ベルモントS3着)を果たし、米国競馬史に蹄跡を残した。

 ≪矢作師に全幅の信頼≫藤田オーナーはフォーエバーヤングを管理する矢作芳人師(63)に全幅の信頼を置いている。「マネジメント力は人それぞれすぎて、結果で判断するしかないと思っています。結果を出し続けていることが一番の信頼。話をすれば経験豊富だと分かりますし、起こり得ることに早めに手を打っている」と5年連続で最多賞金獲得調教師に輝いている手腕を高く評価する。

 ≪音楽グループの言葉 感銘受けて“人生訓”≫藤田オーナーの人生訓は「孤独、憂鬱(ゆううつ)、怒り、それを三つ足しても遥(はる)かに上回る希望」。札幌を本拠地に活動するヒップホップグループ「THA BLUE HERB」の言葉に感銘を受けた。「08年にライブで聞いた言葉。起業して苦しかった時、これを胸に頑張りました。嫌なことにめげたりふてくされたりしないで、その先にあるもっと大きな希望を胸に頑張っていこうという意味」と解説した。

 ≪オーナー務めるJ1町田は一時首位に立つなど快進撃≫J1初挑戦の町田は今季、一時首位に立つなど2位につける快進撃でサッカー界に旋風を起こしている。藤田氏は「正直、こんなことある!?という感じ。もちろんそんなに甘くないと思っていたので、シーズン約4分の1を終えて首位にいるのは全く想像しなかったですね」とまだ実感が伴わない様子だ。

 強豪の青森山田高で指導した黒田剛監督をプロに招聘(しょうへい)。常識を覆す人材の起用で、昨季は即J2優勝を成し遂げた。「僕の周辺でもゼルビアを見に行きたいという人が増えた。勝つことがみんなを振り向かせる理由なんだなと感じています」。戦力も2シーズン続けて積極的な補強を敢行し、結果に結びつけている。ただ、経営を行う上では競馬以上にギャンブル性が高いといい「一番怖いのがサッカー。無尽蔵にお金を使ってしまいかねないので」と笑った。

 ◇藤田 晋(ふじた・すすむ)1973年(昭48)5月16日生まれ、福井県出身の50歳。青学大卒。98年「サイバーエージェント」を設立し、代表取締役社長に就任。00年に当時史上最年少26歳で東証マザーズ上場を果たした。18年からJリーグFC町田ゼルビアのオーナー。同年に発足した麻雀プロリーグ・Mリーグの初代チェアマンも務める。馬主としては21年フェニックス賞(デュガ3着)が初出走。これまでJRA、地方、海外で計66勝を挙げている。子会社のCygamesが「ウマ娘 プリティーダービー」を運営開発。

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