追究する価値のある仮説…ハリルジャパンの勝ち点1
2016年10月17日 10:40
サッカー
皮肉屋のランコに話し掛けた。批判とは、高いボール保持率と速いパス回しを追究してきた日本代表が、その理想を捨てて守備的でカウンター狙いの戦術をとった采配や、選手選考に対するものだ。オーストラリアや韓国でも、驚きをもって日本の変化が報じられたという。
「結果がほしいのか、内容がほしいのか。その違いでしかないわ」
ランコの答えは簡潔だった。最終予選ですでに1敗している日本は、2敗目を喫するとW杯出場が厳しくなる。加えて、アウェーでの強敵との1戦は、攻め込まれることも予想された。
「引き分けでも許される試合だったんでしょ?いいじゃない、引き分け狙いで。監督は内容よりも結果をとった、ということなんじゃないの」
「じゃあ、何でこんなに批判されるんだろう」
「それも簡単よ。結果に関係なく、監督を辞めさせた方がいいと思っているからよ。その理由として内容が悪い、理想を捨てたという話を持ち出しているんじゃないかしら」
確かに、ハリルホジッチ監督は評判がよくない。選手がどう思っているかはわからないが、少なくとも全幅の信頼を寄せているとは聞かない。それが、最終予選初戦のUAE戦の敗戦を機に、表面化しつつあるのが現状だろう。監督と選手、さらにはサポーターとの信頼関係は、長い予選を戦ううえでは、チームを支える重要な要素だ。
有効な反証が見つからない仮説は、追究する価値のある仮説だ。
ノーベル文学賞候補だった村上春樹氏の小説「海辺のカフカ」に出てくる言葉だ。
現状では、日本代表は崖っ縁まで追い込まれたわけではない。ただ、監督続投に疑問を投げかける「仮説」に対し、「有効な反証」がないのも事実だ。ハリルホジッチ監督の下で、予選を戦いきる覚悟を持てないのが、今の状況だろう。つまり、仮説は追究する価値があるということになる。
「予選は結果がすべてだけど、理想を捨てて、相手によって戦術を変えるサッカーで勝ちきれるか、ということね。みんな日本代表を愛してる。たくさん議論すればいいと思うわ」
愛すればこそ、肩入れすればこそ、サッカーに限らず、スポーツ観戦は楽しい。W杯本大会を最終目標とする4年間の道のりは、議論があるだけ、楽しさも倍増する。ただ、ラグビー好きのランコの口ぶりはずっと、人ごとのようだ。
「きみは、百合の花のようだね」
汝、百合の花となるべし。百合の花の如く何ものをも愛するなかれ。百合の花の如く総てのものを愛すべし。(川端康成氏「百合」)
「ふーん。ノーベル文学賞でまとめたかったわけね。この引用は、いまいちだわ」
ランコの皮肉は、最後が最も強烈だった。
◆鈴木 誠治(すずき・せいじ)1966年、静岡県浜松市生まれ。立大卒。ボクシング、ラグビー、サッカー、五輪を担当。軟式野球をしていたが、ボクシングおたくとしてスポニチに入社し、現在はバドミントンに熱中。
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