カズ50歳バースデー 開幕戦勝利に貢献!「還暦まで頑張る」
2017年02月27日 05:30
サッカー
わずか45分前。そのピッチで歴史は刻まれた。50歳での出場はJリーグ史上初の快挙。横浜FCのJ2主催試合では過去最多となる1万3244人の大観衆を見渡したプロ32年目のカズには、込み上げるものがあった。「“生涯現役”というフラッグを見たら涙が出て泣きそうになった」。だが感慨にふけったのは一瞬。すぐに戦闘モードに切り替えた。ピッチに立てばカズはカズだった。
キャンプ中に左足親指を4針縫う裂傷を負ったが、開幕に間に合わせた。前半16分、ゴール前で2人の相手DFをうまくつり出した。野村の決勝点はその直後。カズが導き出したシュートコースだった。以前のようにドリブルやパス、得点まで全てをできるわけではない。だが「技術とか駆け引きは経験で補える。得点することに関してはまだ伸びしろはある」。後半12分にはワンツーから今季初シュートも記録。信念を体現する65分間だった。
50歳。だが本来、忍び寄るはずの「引退」の2文字は頭にない。カズは真顔で「できることなら選手のまま、カズのまま死にたい」と言う。最近、某テレビ番組で爪切りの刃を作る職人の特集を見た。年齢を重ねても衰えぬ繊細さ、道を究めた仕事ぶりに圧倒された。カズもまたサッカーへの情熱は衰えを知らない。体幹や筋トレでは必ず他選手よりも1回余分にこなす。周囲より1センチでも前へ、サッカー道を究めるためだ。
スターの宿命は喜んで背負う。少年時代は静岡市民文化会館の駐車場が秘密の特訓場だった。ボールを蹴りながらコンサートを終えた歌手を“出待ち”した。ミニスカートでプードル犬を抱く石野真子にときめき、横浜銀蝿を自転車で追いかけたことも。「スターを追いかけるのが大好きだった。スターはどういうふうに振る舞うんだろ?って見てた」。人を魅了する術(すべ)をカズは自然と吸収していった。
この日、カズのために集まった報道陣は世界各国から206人。日本代表戦に匹敵する規模だ。誕生日恒例のスーツ姿も14年が白、15年が赤、16年が青、そしてこの日披露したのがピンクと期待を裏切らない演出ぶりで魅了した。「50歳になってもピッチで戦えるのは幸せ。改めて60歳まで頑張ろうと思った」。50歳は通過点。希代のスーパースターは今日もまた全力でピッチに立つ。
◆三浦 知良(みうら・かずよし)1967年(昭42)2月26日、静岡県生まれの50歳。静岡学園高を中退して単身ブラジルに渡り、86年にサントスとプロ契約。複数のブラジルクラブに所属して、90年に帰国し、読売クラブ(現東京V)に加入。セリエAジェノア、クロアチア1部ザグレブ、京都、神戸、シドニーFC、Fリーグの北海道でもプレー。05年から横浜FCに在籍。国際Aマッチ89試合55得点。1メートル77、72キロ。血液型A。
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