ハリルの心中は
2018年04月03日 10:30
サッカー
ただ試合をするだけなら「いい腕試し」だったが、W杯へ向けてチームの完成度を高めたいこの時期は試合のテーマが違う。勝たないと自信にならないし、課題をクリアしていないと「よくやった」とはいえない。
だいいち今回欧州遠征を行ったのは何のためか。アウェーの厳しい試合を経験することと、W杯1次リーグで当たる国と似た相手と対戦して感覚をつかむためだったはず。厳しさは体験できたが、対戦国を想定した戦いではなかった。
ハリルホジッチ監督が日本代表を率いてすでに3年。選手個々のことは熟知しているはずだ。さらにW杯でどう戦うかのイメージやチームの骨格ができた前提で行うはずだったが、吉田や酒井宏ら主力がケガで招集できず、選手の見極めに重点を置いたのだろう。それはいいが、ここまで積み上げてきたチームコンセプトもよく見えなくなっていた。新戦力も収穫は中島ぐらい。チームの完成度も高まらず、監督のイライラが募っているのもよくわかる。
20年前、W杯フランス大会に初出場したときはすべてが手探りで、岡田監督も選手も日本協会も周囲もすべてがドタバタだった。それまでW杯は「見るもの」だったから当然だろう。しかしいまや6大会連続6度目の出場を飾り、ノウハウも蓄積されている。ハリルホジッチ監督も前回大会でアルジェリア率いて出場している。じっさい1カ月間あればチームはつくれる。Jリーグのチームは始動から約1カ月半で開幕を迎えている。監督が交代してサッカーがガラリと変わったチームも、開幕までには形になる。能力の高い選手が集まる代表ならまったく問題ないだろう。
あと2カ月半、ここからは想定していないことがおこるものだが、それを修正するのが日本協会や指揮官の腕の見せ所。そして「この時期に悪い部分が出たのはよかった」と考えるしかない。ハリルホジッチ監督が信念を貫けるか、ポジティブに考えられるかにかかっていると思う。
◆大西 純一(おおにし・じゅんいち)1957年、東京都生まれ。中学1年からサッカーを始める。81年にスポニチに入社し、サッカー担当、プロ野球担当を経て、91年から再びサッカー担当。Jリーグ開幕、ドーハの悲劇、ジョホールバルの歓喜、W杯フランス大会、バルセロナ五輪などを取材。
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