「俊輔は努力もできる天才だった」 セルティック時代から支えたトレーナー新盛淳司氏手記
2022年10月18日 04:40
サッカー
それぐらい俊輔は最後まで現役にこだわっていた。だから、何か心を折られるようなことがあったのかな、と。だとすれば、右足首(の故障)だろうという気はしていたのですが、やっぱりもう限界だったんでしょう。
磐田時代の18年6月に(右足首の)手術をしましたが、それ以前から朝起きたら足を引きずっていました。俊輔の得意なあの切り返しも、できなくなっていました。それでもさまざまな治療を試しながら、チームの勝利のためにプレーを続ける姿を見て、“よくやっているな”と思っていました。普通の人ならできていなかったと思います。歩くだけで痛いはずですから。ここ数年の右足首の状態を考えれば、本当にここまでよくやったと思います。
俊輔との思い出は、語り尽くせないほどあります。セルティック時代の08年にトレーナーに就任し、グラスゴー空港で初対面した時のこと。その時はオフに左股関節の手術を終えたばかりで、復帰へ向け、いきなり重要な任務を任されました。特別なことをした覚えはないですが、08年8月17日のダンディーU戦で無事に復帰。短い出場時間でアシストも記録しました。そして試合を終えて家に戻ったら、俊輔が珍しくユニホームを洗濯していて、翌日にサインを入れてくれたんです。本当にうれしかったです。
08年11月には左膝内側側副じん帯を損傷。直後に日本代表戦もあったので、肝を冷やしました。それでも思ったより早く復帰でき、代表戦でも活躍。笑顔でグラスゴーに戻ってきたのを覚えています。“代表の10番を背負うのってこんなにプレッシャーがあるんだ…”と、肌で感じた瞬間でもありました。
磐田時代は週2、3回、横浜―磐田間を約2時間半かけて車で通い、2人とも座骨神経症になったりもしました。それら全てがかけがえのない思い出です。
寝食をともにし、真のプロフェッショナルな姿も目の当たりにできました。クラブハウス入りするのは、必ず練習の2時間前。しかも練習で100%を出せるように、必ずメンタルを整えて行く。それを一日も欠かさずに続けていました。彼は天才だけど、努力もできる天才。それが突出した存在になれた一つの要因だと思います。
まだ完全に引退したわけではないので、“お疲れさま”という気持ちにはなれていないですが、次のステージでもきっと活躍してくれると期待しています。(トレーナー)
◇新盛 淳司(しんもり・じゅんじ)芝浦田町スポーツ整骨院・はり治療院、新浦安しんもり整骨院・はり治療院の代表。柔道整復師、鍼灸(しんきゅう)師の資格を持つ。関東1部ブリオベッカ浦安のチーフトレーナー。サッカー元日本代表MF中村俊輔をセルティック時代から支える。https://shibaura-seikotsuin.com
《俊輔引退にスコットランド紙「セルティックのアイコン」》中村の引退決断はかつてプレーしたイタリアやスペインでも報じられた。セルティックでの活躍が際立ったスコットランドでは特に関心が高く、デーリー・レコード紙は05~09年に公式戦166戦34得点でリーグ優勝3回などタイトル獲得を支えたことなどを紹介。「セルティックのアイコン(象徴)」と表現し、多くのメディアは「ヒーロー」と伝えた。SNSでは「ナカより優れたFKキッカーはいなかった」としてコーチ就任を求める声も上がっている。
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