55歳の「スーパーマン」カズが横浜FCに残そうとしているもの
2023年01月15日 17:20
サッカー
レンタル元の横浜FCのキャンプに練習生として参加したのはJ1の選手たちに交じってプレーすることで、ポルトガルの高いレベルに適応できるかどうか確かめる狙いがあった。その目的は果たしつつあると言える。
J2だった昨季から横浜FCを指揮する四方田修平監督は、今季から参戦するJ1での戦いを見据え、連日強度の高い練習を課している。時間は1回1時間~1時間半と決して長くないが、メニューの合間も水分を取る以外は休憩はない。
55歳の体には過酷なトレーニングだが、カズは全メニューを消化している。紅白戦が行われた10日には「全体的に疲れた。判断のスピード、走るスピード、やっぱり強度はかなり高い」と苦笑したが、翌11日には「J1の強度の高いトレーニングに参加できることをうれしく思っている」と話した。充実した日々を送っていることは間違いない。
チームにとっても、その存在はプラスになっている。四方田監督は「攻守の切り替えが我々の生命線」と語り、トランジション(切り替え)を重視。ボールを奪ったら素早く攻め、ボールを失ったら素早く回収することを求める。FWは守備時には相手DFを追い回し、ボール奪取後は前線に走り込む。カズは忠実にその動きを繰り返す。大ベテランが手を抜かずに走っているのに、若い選手がサボる訳にはいかない。四方田監督は「もうスーパーマンですよ」とその姿勢を絶賛する。
ピッチ外でも、カズの振る舞いはお手本になる。練習後には入念に手を洗い、うがいをする姿が見られる。ホテルに戻っても食事や体のケアなど自己管理を徹底している。
練習後に一緒にランニングを行うなど、積極的にカズとコミュニケーションを取っているFW小川航基(25)は「一つ一つの行動に対する考えはやっぱり違う。自分の甘い部分を知ることができた」と話していた。
プロサッカー選手はどうあるべきか。レジェンドは身をもって示している。リーグ戦が始まれば同じユニホームを着ることは恐らくない。しかし、カズが残したものは横浜FCに生き続けるはずだ。(スポーツ部専門委員・福永稔彦)