梅山修氏 J1新潟、早川に感じたプロ魂 日常の備えで120分プレー

2023年09月01日 09:31

サッカー

梅山修氏 J1新潟、早川に感じたプロ魂 日常の備えで120分プレー
<天皇杯 新潟・川崎F>延長後半、ゴールを決める新潟・早川(撮影・西海 健太郎) Photo By スポニチ
 【元アルビ・梅山チェック】 歴史と伝統があり、優勝すればACL出場権も獲得できる天皇杯。そのベスト4を懸けてリーグ戦から中3日、さらにこの2日後には再びリーグ戦を控える中での一戦は、メンバー編成と試合の進め方。この2つが注目だった。
 新潟は直前のリーグ鹿島戦から先発11人全員を入れ替えた。個性を生かしながらも個人に依存しすぎない。誰が出ても似たクオリティで戦える。これは、どこで誰がどのようにプレーしたらいいのかというチームとしてのモデルが明確である証であり、そのための日常の準備、そして何より監督の選手たちへの期待と信頼が伝わってくる。一方、リーグ戦とほぼ同じ顔ぶれの川崎Fは、冠が違っても「常在戦場」といった様相だった。

 前半は川崎Fの流動性とパスワークによって自陣に押し込まれる時間が長く、新潟が低い位置で奪っても相手の切り替えの速さと強さによって、なかなか敵陣にボールを運ぶことができなかった。自分たちでパスをつないで前進することができない時、ゴールに向かうためのもう一つの有効な手段は、ボールを奪って素早く背後を突くこと。

 先制点はまさにそれだった。相手の横パスがずれたところをMF松田がダイレクトでFW谷口へ。その谷口の前をFWネスカウが斜めに走ったことで相手を引きつけ、よりスペースが広がった。谷口はスペースに運び、対角に打ち込んだグラウンダーのシュートは正確で、ストライカーの落ち着きを感じられた。この得点の直前にもFW小見が相手ボールを奪い、走り込んだ松田につなげて決定的なシーンをつくっていたことで、奪って素早く攻めるイメージをより強くしたのであろうことも見逃せない。

 そしてこの試合で最もプロフェッショナルを感じさせたのがDF早川だ。ボールを保持しながら常に背後を狙っている川崎のFW陣に対して、一度もそのスペースを使わせていない。使わせていないから自陣に向かって競争することもないので目立ちにくいが、前に強く、後ろに速く、周囲のカバーもこなすという大車輪の活躍を見せた。

 リーグ戦では出場機会が多いとは言えない彼が120分もの長い時間プレーし、ほとんどのピンチを周到な準備で未然に防いた姿から、日常の心身の備えや取り組む姿勢がいかに素晴らしいか十分伝わってくる。それはチームとしての基準でもあるのだろう。監督がメンバーを全員入れ替えることに躊躇(ちゅうちょ)がないのも理解できる。

 その早川がこの日最高の輝きを放ったのが延長後半アディショナルタイムの同点ゴールの瞬間だ。MF三戸からの滞空時間の長いクロスを、遠いサイドで飛び出した相手GKよりも先に飛んで後に着地したように見えたほど、滞空時間の長いジャンプヘッドは、スポーツがアートになった瞬間だった。

 天皇杯は敗退となったが、土曜にはすぐにリーグ戦がある。早川をはじめ新潟では出場を約束された選手はいない。しかしそれが過密日程でも一定のレベルで戦えるマネジメントであり、チームのモデルや一体感をより強固にしている。120分の激闘から中2日でも、チームとしてプロフェッショナルな戦いを見せてくれるだろう。(アルティスタ浅間監督)

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