梅山修氏 J1新潟の成長感じた最終戦 11人が同じ絵を描けている 信念は常識を変えられる
2023年12月06日 05:00
サッカー
ただ、成長という視点で明らかに見て取れたのは2つ。守備がはまらず多少押し込まれても、GK小島を中心に落ち着いて耐えることができること。そしていざボールを奪った時に、速攻と遅攻をチームとしてコントロールできること。
前者は課題であったクロスからのピンチが減り、この試合を含めて4戦連続無失点という結果がそれを証明しているし、後者はFW長倉の得点シーンがまさにそれだ。相手の長い横パスをカットしたDF藤原は瞬時に前進を試みたが相手の戻りが早かったために、いったんボールをCBデンに下げ、判断をボール保持に切り替えた。それを4人のDFにMF星と高、さらにGK小島も加わって自陣でボールを縦横に動かしながら、相手が前に出てきた瞬間に縦パスを入れて、一気に相手陣で新潟3人対C大阪2人の状況をつくった。これはまずゴールを目指すというプレーの優先順位と、なぜボール保持をするのかという目的、そしてその具体的な方法をGKを含めた11人が同じ絵を描けている証拠と言える。
もちろんこれは、この1年の成果というよりも、J2でアルベル前監督がボールを愛することを浸透させ、その手段をもって松橋監督がサッカーは得点を奪い合う競技であることを、「君たちならできる」という信頼とともに選手に伝えていった成果だろう。目先の勝敗以上に新潟がどのように戦うのか、その信念を支えたクラブとサポーターの存在も大きい。関わる全員の成果だ。
後半戦だけ見れば勝ち点は28で神戸、福岡広島に次いでリーグ4位タイ。見た目の成長はこうした数字にもしっかりと反映されている。これがもし多くつくり出してきたチャンスシーンで決めるべきを決め、守備でなくすべきミスを減らすことができれば、というシンプルでしかし難題なテーマに挑む来季にチームの伸びしろと期待を抱かせる。
百戦錬磨のJリーグの名将たちが一様に新潟のサッカーを称賛している。新潟という降雪地のクラブが昇格初年度に堂々とJ1で旋風を巻き起こしたことに自信を持ちたい。信念は常識を変えることができる。