田中智美1秒差リオ当確!「今回は決まったと思っています」
2016年03月14日 05:30
マラソン
リオデジャネイロ五輪の代表選考会を兼ねて行われ、田中智美(28=第一生命)が2時間23分19秒の2位でリオ行きを確実とした。37キロ手前から小原怜(25=天満屋)と日本人最上位をめぐって激しく争い、わずか1秒差で振り切った。14年横浜国際で優勝しながら翌年の世界選手権の代表を逃したが、今回は自己ベストを2分46秒縮めて初の五輪代表に当確。1月の大阪国際女子を制した福士加代子(33=ワコール)の代表入りも内定した。男女の代表は日本陸連の理事会が行われる17日に発表される。
たった1秒の差が天国と地獄を分けた。勝負が決まったのは200メートルほどの最後の直線。ナゴヤドームに入る手前のカーブで田中が小原より一歩前に出た。37キロ手前から始まったリオ切符をめぐる2人のデッドヒートを、唇上のほくろがトレードマークの28歳が僅差で制した。
「ラスト勝負は絶対に誰よりもリオへ行きたい気持ちが強いんだという思いでした」
レースは30キロで動いた。仕掛けたのは昨年Vのキルワ。1キロ3分20秒台で推移していたラップタイムが、30~31キロでいきなり10秒速い3分13秒になった。8人の集団がばらけた。田中は即座に反応した。「目標にしていたのが優勝だったので、日本人トップは考えてなかった」。優勝争いと関係ない位置で、最初から日本人同士の2位争いをするつもりはなかった。“苦い記憶”に苦しんできたからだ。
田中を語る時に14年の横浜国際を抜きにはできない。優勝しながら15年8月の世界選手権の代表から落選した。序盤に先頭を追わなかったレースを同3月の日本陸連理事会で「消極的」と判断されたことが一因だった。
ただ、悲劇のヒロインは、すぐに再起へ動きだした。「応援してくれている人の多さに気付かされた。両親、親戚、友人、学校の先生…。その人たちのために頑張りたいと思った」。第一生命の山下佐知子監督と「誰もが認める強さを身に付けるしかない」と誓い合った。
夏場までスピードとスタミナを強化。1500メートルをはじめ4種目で自己ベストを更新した。好きなビールも封印した。チームの先輩で09年世界選手権銀メダルの尾崎好美さんが「きょうぐらいいいじゃん」と誘っても、頑として聞き入れなかった。全ては落選の悔しさを晴らすためだった。
キルワのスピードにはついていけなかった。だが、小原に追いつかれた後に再び踏ん張って日本人最上位をつかんだ。自己ベストを2分46秒縮める激走。日本陸連の尾県貢専務理事が「タイム、内容ともに高く評価できる」と認めた執念の2位に大きくうなずき、自らも「今回はもう決まったと思っています」と代表切符に確信をつかんだ。
玉川大を出た無名のランナーは入社当初、強豪の練習についていけなかった。「努力を過不足なく一貫してできる」(山下監督)という姿勢でお荷物から日本のトップ選手へ上り詰めたが、ゴールはまだ先。五輪で花を咲かせてこそ、雑草のサクセスストーリーが完成する。
◆田中 智美(たなか・ともみ)1988年(昭63)1月25日生まれ、千葉県出身の28歳。14年3月の名古屋ウィメンズで初マラソンに挑戦し、2時間26分5秒で4位に入った。趣味はカメラ。小学校ではバスケットボール、中学から陸上部。千葉英和高から玉川大を経て第一生命に入社。玉川大で小学校と中学、高校の教員免許を取得。1メートル54、40キロ。
▼15年世界選手権の女子マラソン代表選考 名古屋ウィメンズで2時間22分48秒をマークして日本人トップの3位・前田彩里(のちに2位に繰り上げ)、2時間24分42秒で日本人2番手(全体4位、のちに3位に繰り上げ)の伊藤舞はすんなり決まったが、焦点となったのが3枠目。横浜国際を2時間26分57秒で制した田中智美、大阪国際で日本人トップの3位(のちに2位に繰り上げ)ながら2時間26分39秒の重友梨佐の争いになり、選考会唯一の優勝選手だった田中が落選。日本陸連の酒井強化副委員長は「レース内容が物足りない」と落選理由を説明。積極性やレースのメンバーレベルにも注文が付いた。
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