すべて自費でまかなわざるをえないパラリンピック選手たちの実情
2016年09月08日 10:00
五輪
障がい者がスポーツをする上で不可欠な補助用具、競技用車いすや義手、義足は個人に合わせてオーダーメードで作られるために値段が高い。たとえば陸上短距離、跳躍の高桑早生(24)が左足に着用している下肢義足は本人によれば「90万円ちょっと」という。もちろん、普段用と競技用に最低でも2足はいるし、競技用は頻繁にメンテナンスも必要なので実際にはもっとかかる。車いすも同様で、ほとんどの選手が自費でまかなっているのが実情だ。
合宿や遠征にももちろん金がかかるが、五輪選手のように潤沢な支援はない。日本パラリンピアンズ協会が先月公開した代表選手たちの「競技環境調査」によれば、合宿や遠征などで1年間に自己負担した額は平均で1人147万円にも上っている。逆に言えば、それだけの自己資金がなければ競技を続けたくてもできないということだ。卓球に出場する吉田信一(50)は貯金を使い果たすと競技生活を中断して働き、少し貯まるとまた復帰、中断を繰り返してきた。「国内の5倍の経験ができる」という海外に行きたくても資金も時間もなく、見るに見かねた勤務先が海外遠征を仕事上の出張扱いにしてくれたおかげで今回初めてパラリンピックに出場することができた。似たような環境に置かれた選手は他にも大勢いる。
さらに言えば、21・6%の選手が障がいを理由に施設の利用を断られたことがあるという。障がい者スポーツの普及、振興が遅れているのは、これまでほとんど報じてこなかった我々マスメディアにも責任がある。その反省の上に立ち、少しでもパラリンピックを目指す選手たちの実情を正確に伝えられるように、これからも取材を続けていきたい。(編集委員)
◆藤山 健二(ふじやま・けんじ)1960年、埼玉県生まれ。早大卒。スポーツ記者歴34年。五輪取材は夏冬合わせて7度、世界陸上やゴルフのマスターズ、全英オープンなど、ほとんどの競技を網羅。ミステリー大好きで、趣味が高じて「富士山の身代金」(95年刊)など自分で執筆も。
おすすめテーマ
2016年09月08日のニュース
特集
スポーツのランキング
-
錦織「ベストなテニスだった」“挑戦者”の意識でマリー攻め落とす
-
アスリート夫婦が立ち向かう人生最大の難関 日本ならどうする?
-
すべて自費でまかなわざるをえないパラリンピック選手たちの実情
-
リオ・パラリンピック開幕 日本選手団、目標は金10個
-
松岡修造氏、愛弟子“金星”に放心状態「ただ一人冷静なのが錦織圭」
-
日馬富士 白鵬気遣う「出るには勇気がいるが、休む勇気はそれ以上」
-
錦織、4時間の熱戦制し4強「ワクワクしすぎて冷静さ保つのが大変だった」
-
錦織 逆転で4強!マリーをフルセットの末下し2年ぶり準決勝進出
-
白鵬、10年ぶり全休へ 横綱昇進後初 ケガで四股も踏めず再検査
-
リオ銀の柔道・原沢 相撲に“勧誘”された!?日馬「いい男だな」
-
沙羅 号泣観戦したフェンシング太田と約束「平昌で金」守る
-
ジョコ また“棄権勝ち”今大会3度目 超エコ4強も戸惑い
-
モンフィス歓喜 全米初4強入り フランス同国対決でプイユ下す
-
彩香 メジャー初Vへ超ロング6750ヤードも「凄く楽しみ」
-
鈴木 1打目大事!「あとはメンタル」脱イライラ誓う
-
松山 鍵はショット!BMW選手権 予選はキスナーらと同組
-
正木「勝てるだけの稽古を積んだ」軽やかにV2宣言 後輩大野に刺激
-
車いすラグビー 池崎―池のホットライン「世界の誰も止められない」
-
6大会メダル21個「殿堂」日本人1号・河合純一氏が聖火ランナー
-
リオ銀の丹羽に500万円ボーナス 来春一人暮らし「家具買う」
-
リオ代表・茜 女子ダブルスで3位 男子シングルスは坂井が3連覇
-
協会専属委員に元NBAトレーナー佐藤氏 Bリーグ理事会
-
ウッズ 米ツアー来季10月の開幕戦出場に意欲!昨年8月以来
-
先場所全休の豊ノ島「このまま終われない」十両から再起目指す
-
男子走り幅跳び 金への助走に山本手応え「トラック走りやすい」
-
ウッズ、10月来季開幕戦で復帰視野 昨年8月から故障で欠場