沙羅 神風吹いた!W杯史上最多53勝 初勝利から5年で金字塔
2017年02月17日 05:30
ジャンプ
「まさか勝てると思っていなかったので複雑な気持ちでもある」。1回目は2位。だが、トップのルンビーとは距離にして4メートル近い得点差をつけられた。だが、1回目は強風を生かしたライバルが、2回目はそれにあおられて失速した。確実に2本そろえた高梨に予期せぬ優勝が舞い込んだ。
「一概にこれが凄いことなのか自分の中ではまだ複雑」。映像を見てイメージづくりしたこともあるシュリーレンツァウアーの大記録に肩を並べた。「男子とは土俵が違う」というのは常々口にしてきたこと。だが、あえてさらに土俵を広げてみれば簡単な記録ではないことが分かる。国際スキー連盟(FIS)主催の別競技を見渡しても高梨を上回る勝利を挙げているのは7人だけ。いずれも各競技のスーパースター、そして五輪金メダリストだ。
これまで一発勝負の五輪や世界選手権に縁がなく「今まで大きな試合で力を発揮できてない」と課題を感じてきた。そこで高梨は競技力だけでなく「人間力を高めていくこと」を考えた。例えば平昌入り前の白馬合宿の際、1人で食事に出かけた。外国人観光客でごった返す店内。「立って食べるのもどうかなと思った」とおそるおそる英語とジェスチャーで相席をお願いした。「言葉は大事だけど気持ちが大事」。たかだかそれだけのこと。しかしソチ五輪の3年前、17歳の高梨ならできなかったし、分からなかったという。「だからそれは成長した部分かな」
前日は助走速度が伸びずに2位にとどまりコーチの父・寛也さんを含めて多くの助言をもらったという。その中から2つの選択肢を選んだ。助走時にレールの外側にスキーを当てない。滑走面がきれいな新品のスキー板に取り換える。結果は吉と出て助走にも勢いを取り戻した。その決断力や強風でも乱れない集中力。それは競技以外の対応力も磨いてきた結果。だから53勝目についてこうも言った。「記録が出せたことはとても自信になった」。12年蔵王大会の初勝利から5年かけてたどり着いたジャンプ界の金字塔。その先に悲願の金メダルは近づいている。
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