桐生 NoMusic No9秒台 快走を音楽が後押し「大事な存在です」
2017年06月23日 11:00
陸上
「音楽は僕にとって、けっこう大事な存在です。毎日聴きます。部屋でもスピーカーで聴きます。まあまあいいスピーカーですよ」
競技場で聴くのはもっぱら「洋楽」。「アビィーチー、クリス・ブラウンですね。この人たちの新作がどんどん増えていく形です」。ノリがいい、思わず踊り出したくなるナンバーが試合前の定番だ。
外国の音楽に限定するのは、理由がある。「日本語だと歌詞が頭に入って集中できなくなるんです。洋楽だとそれがない」。以前、競技場に日本語の曲が流れ、気が散るがあまりに止めてもらったことがあったほどだ。
洛南高校(京都)の頃から「だいたいそればっかりですよ」と、選曲は変わらない。だから、10秒01を最初に出した高3時も、リオデジャネイロ五輪男子400メートルリレーで銀メダルを取った時も基本的にはアビィーチーやクリス・ブラウンがテーマソングだった。ただし、例外がある。
「実は邦楽が1曲だけ入っています。ゆずの栄光の架け橋です」
小学校の時はサッカー少年。「送り迎えの母(いくよさん)の車の中で流れていました」。その延長線上で、日本勢で唯一“ランクイン”。04年アテネ五輪との関連は「ない」そうだ。ちなみに、父・康夫さんの車内は、「アリスのチャンピオンが定番。だから、谷村新司さんを見かけたときはすごく興奮しました」。幼少時から音楽に親しんできた。
前出の曲は、試合会場で聴くもの。「練習、試合、学校へ行く時で曲は全部違う」。普段の曲はその時の心境で大きく左右される。例えば、大学2年の5月。右太腿裏肉離れで長期離脱した。失意のどん底で支えになったのは、長渕剛だった。
「ナショナルトレーニングセンターのトレーニングルームを真っ暗にして、流していました。巡恋歌、勇次、しゃぼん玉とか。とんぼはバージョン違いでよく聞きました」
状況で曲を変えるのは、アスリートならではのこだわりがある。
「試合って特別じゃないですか。その曲(ゆず、アビィーチー、C・ブラウン)を聴くと試合だなって感じがする。それが好きなんです」
耳に届くメロディーが、日常からレースへと切り替わるスイッチ。これが桐生の快足の原動力になっている。
23日から日本選手権が始まる。今季は3度の10秒0台を出すなど、調子の波が非常に小さい。6月のチェコ、ローマでの2連戦も10秒1台で3本走り、決して好調でなくても高い次元の走りができることを証明した。
「このままの勢いで日本選手権に行って、代表切符を取って、世界選手権に行きたい」
目指すターゲットが世界選手権のファイナリストという軸はぶれない。リズムに乗って、スタート地点に立つ。
◆桐生 祥秀(きりゅう・よしひで)1995年(平7)12月15日、滋賀県彦根市出身の21歳。洛南高3年時の13年に100メートルで日本歴代2位となる10秒01をマーク。14年に東洋大に進学し、15年3月には追い風3.3メートルの参考記録ながら、9秒87を叩き出した。16年6月にも再び10秒01をマーク。リオ五輪の100メートルは予選落ちだったが、400メートルリレーは3走を務めて銀メダル獲得に貢献。1メートル75、68キロ。
▽日本選手権での世界選手権代表選考 条件が細分化されているものの、基本的にどの種目も、世界選手権の参加標準記録を突破し、優勝した選手は決定。3位以内も選考対象になる。男子100メートルで参加標準10秒12を突破し、今大会にエントリーをしているのは桐生、山県、多田、ケンブリッジ。
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