何度でもカムバック!NHK杯駆けつけ日記
2017年11月17日 10:00
フィギュアスケート
いい言葉だよね。
11月9日午後4時40分、会議から戻ると「羽生選手、負傷か?」の一報が届いていた。翌日のSPからの取材予定であったので頭は真っ白だ。午後4時56分、現地で取材していた椎名航カメラマンの写真が入電。ルッツの着氷から氷上に叩きつけられるまでの連続写真がほぼ4秒ごとにモニター画面に映し出されて行く。最後まで写真を見ることが辛く、東京駅からのぞみ号に飛び乗った。
10日、大阪市中央体育館。地下1階に設けられたプレスルームにはいつもの面々がいて所在なげにパソコンをいじっている。
前日の事故の目撃者たる彼らカメラマンの証言はこうだ。
リンクに入って来たときから少ししんどそうだった・自分の気持ちと体の折り合いがついていないようだった・きょうはよくコケるなあ、と思っていた・4回転サルコウからの連続ジャンプは決まっていた・ループは決まらず、そしてルッツに入った・軸が曲がったまま着氷した・エッジが刺さった・ヤバイと思った・ロシアなどの固い氷だったらただの転倒で済んでいたのでは…。珍しく饒舌(じょうぜつ)な彼らの背後の壁には羽生結弦選手のNHK杯欠場の知らせが張り出されていた。
つらい決断であったと思う。テレビの前に陣取る人々、そして会場に足を運んだファンたちがどれほどの苦労と熱意でこの日のチケットを手に入れたかを彼は知っている。姿を見せることだけでそうした思いに少しは応えられるのでは、とも考えたであろう。だが目撃者たちの証言、写真を見る限りそれは無理だ。私は彼が転倒して痛さで顔をゆがめる姿を初めて見た。いつもなら笑い転げて周囲を安心させるか、あるいは自分自身に対して怒っているような仕草を見せる姿しか知らない。
幸いなことに彼の思い、熱いファンたちの思いに出場した選手たちが応えてくれて大会は素晴らしいものとなった。フリーが行われた11日にも会場の外には「チケット譲って下さい」というプラカードを持った人々が大勢いた。特定の選手だけではなくフィギュアスケートが純粋に好きな人の増加こそ、彼ら選手たちが一番に望むこと。
絶対安静10日、3〜4週間で負傷は癒えるという。だが体が覚えてしまった痛さの記憶を消し去るにはもう少し時間はかかる。
彼は2012年のニースでの世界選手権を振り返り「(転倒した瞬間に)休めた、と前向きに考えることが出来た」と語ったことがある。
そう、今回も「休めた」のだ。
それ以上のことは言ってはいけない。何しろ逆境は大好物で、それを楽しめる強さが彼にはある。
彼は帰って来る。(写真部長)
◆長久保豊(ながくぼ・ゆたか)1962年生まれ。会場近くで「あなたは能登さんでは?」と声をかけられたが「いいえ、田中です」と答えたお茶目な55歳。だが「田中さんはもっとカッコイイわよ」と言われてヘコむ。今度は「坂本です」って言おう(以上の会話はコアなフィギュアファンにしか分からない)。
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