NBAに存在する未来の億万長者? 選手兼経営者のプレーに注目!

2018年03月27日 09:30

バスケット

NBAに存在する未来の億万長者? 選手兼経営者のプレーに注目!
多くの事業を手掛けているペイサーズのブッカー(AP) Photo By スポニチ
 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】トレバー・ブッカーは30歳になった。クレムゾン大(南カロライナ州)を出て2010年にNBAの世界に入り、今季はネッツから76ersにトレードされた後に解雇され、その後ペイサーズと契約を交わしている。
 成績は通算で平均6・9得点。1メートル98とフォワードとしては小柄な部類に入る選手だが、体を張ったプレーには定評がある。1試合の出場時間は48分中20分ほど。いわゆる「ロール・プレーヤー」だが、それでいて年俸912万ドル(約9億6000万円)を稼ぐのだがら、バスケットボールは彼にとっては悪くはないビジネスだ。

 なんの話をしているのかというと、未来のビリオネア(億万長者)について…。レブロン・ジェームズ(キャバリアーズ)やステフィン・カリー(ウォリアーズ)らと間違えていないか?と思われるかもしれないが、実はかなりの確率で的を得ていると思う。

 年俸の件は脇に置いておこう。ブッカーはNBA8シーズンで総額3400万ドル(約35億7000万円)のサラリーをもらっているが、たぶんそれはやがて手にする生涯収入からすればほんの一部でしかないだろう。

 では、フィリー・ドットコム(電子版)のサラ・トッド記者の記事を元に、まず彼のクレムゾン大時代までさかのぼろう。ここで彼はジョナー・ベイズ氏という商才に長けたルームメートと出会った。南カロライナ州ニューベリーという人口1万人ほどの小さな町で生まれ育ったブッカーは高校時代からすぐれたバスケットボールの選手として有名だったが、一方でビジネスにも関心を示していた。それが大学生活である意味、スポーツとの“二刀流”で花開くことになる。

 ベイズ氏と共同で最初に試みたビジネスはバスケットボールのアカデミー。言わば組織化されたバスケ教室だ。この組織は現在では6つの私立学校へと発展しているから、両者の経営手腕は相当なものだ。2人は特定の業種に限定せず「利益を生むものは何でもやってみよう」というスタンスだったので、不動産事業にも乗り出した。そして、一戸建てや商業ビルを買い取ると、プエルトリコのリゾート地にも物件を抱えるようになった。その利益を元手に今度はサッカーチームを買収し、はたまた環境にやさしいシャンプーの販売でさらに事業を拡大させていった。すでにこのコンビは12社以上の企業の共同経営者。現在、ペイサーズのユニフォームを着ているとは言え、ブッカーは数々の事業を軌道に乗せた若き起業家の1人なのである。

 「あと30年から35年後にはそうなっているだろう」と、本人も10億ドル(約1050億円)以上の資産を持つビリオネアになることを確信。なんだかビル・ゲイツ&ポール・アレン両氏による「マイクロソフト物語」の第1章のようだが、ブッカーの収入はNBAを引退しても増え続ける。カリーの年俸は2019年シーズンから史上最高の4000万ドル(約42億円)を突破するが、長い目で見ると、NBAでは“格下”のブッカーがやがて立場を逆転させるかもしれない。

 プロスポーツ選手の金銭感覚は社会通念と比べると、ずれていることが多い。NBAのかつてのスーパースター、チャールズ・バークリー氏(55)は知らない間に代理人に自分の金を使われ、気が付いたときには多額の負債を抱えていた。NBA歴代最多得点記録を持つカリーム・アブドゥルジャバー氏(60)も自己破産の経験者。それを考えると商魂たくましいブッカーの生き方は、これまでになかった“新風”をリーグに吹き込んでいるようにも見える。

 セルティクスでファイナル制覇を経験しているグレン・デービス(32)は今月に入って麻薬所持容疑などで逮捕された。宿泊していたメリーランド州アバディーンのホテルで、支配人がデービスの部屋からマリフアナの匂いがしたために警察に通報。警察官がデービスの部屋に踏み込んでみると、126グラムのマリフアナと現金9万2000ドル(約967万円)が発見された。たとえ現役時代に輝かしい成績を残したとしても、引退後の人生が不安定になるのがプロスポーツの世界。もちろんブッカーの事業が全部成功するとは限らないが、少なくともシュートやパス、ドリブル同様、ビジネスの基礎を頭脳に叩き込んでおくことはスポーツ選手の第二の人生にとても大切なことなのだ。

 ペイサーズはすでにプレーオフ進出を決めているので、4月を迎えるとブッカーにとっては本業(副業?)が忙しくなる。NBAが生んだ数少ない選手兼経営者。ファイナル制覇の向こうにある「ビリオネア」という最終目標に向かって、背番号20が突き進んでいる。(専門委員)

 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市小倉北区出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。スーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会に7年連続で出場。

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