東京五輪延期、来年夏までに開催…コロナ終息見通せず今秋断念、正式名称は「2020」のまま
2020年03月25日 05:30
五輪
迷走の末にたどり着いた結論だった。日本政府関係者によると、電話会談はバッハ氏側から打診があった。感染が広がる中で当初は予定通りの開催に理解を求めていたが、予選はおろか練習も満足に行えない選手や各国のオリンピック委員会から延期を求める声が相次ぎ、延期を含めて4週間以内に結論を出す方針を打ち出した臨時理事会から、わずか2日で1年程度の延期決定にまで踏み込んだ。
安倍首相にとっては東京五輪・パラリンピックを望ましいとしていた「完全な形」で開催できることになる。日本政府関係者は「2年延期だとトップ選手がかなり入れ替わり、影響が大きい。1年延期であれば現在の選手を代表として維持しやすい」と代表選考など選手への影響を考慮し、延期は1年以内が望ましいとの認識を示していた。安倍首相の自民党総裁任期は来年9月末まで。1年程度の延期であれば首相として五輪を迎えられる。21年に行われるが、大会の正式名称は「東京2020オリンピック」とし、今夏に予定されていた規模での開催を目指すことになる。
組織委の森喜朗会長は「大きなフレームは変えない」と話し、札幌でのマラソン開催を含めた開催規模やプランの見直しには否定的な見解を示した。一方で競技会場の多くは1年後の予定が埋まっている状況で、今夏に予定していた通りに使用できるのか。武藤敏郎事務総長も「全てが現状通りにならないかもしれない」と認めた。
IOCが22日の臨時理事会が決めた4週間以内に結論を出すとした期間に関し、森会長は「こないだの時点の合意事項。とらわれることはない。早くやるべき」と早急に調整を進める方針だが、年単位で時間をかけてきた環境整備をどこまで速やかにできるか。追加の経費も大幅に膨らむことが予想され、新型コロナに見舞われている社会生活や経済活動に影響をもたらすことは間違いない。大きな課題を抱えたまま世界最大のスポーツイベントが方向転換を図る。
【東京五輪とコロナ禍の経過】
▽20年1月22日 2月3日に予定していたボクシングの五輪アジア・オセアニア予選が開催地の中国・武漢での新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止。
▽3月3日 IOCバッハ会長は「選手は信頼して全力で準備を」と予定通りの開催を世界に宣言。
▽同11日 WHOが世界的流行を示す「パンデミック」を宣言。トランプ米大統領は「1年延期すべき。無観客よりはいい」と発言。バッハ会長は「WHOの助言に従う」とトーンダウン。
▽同12日 無観客で聖火採火式は実施。しかし、翌13日にはギリシャ国内での聖火リレーが観衆過多を理由に打ち切り。
▽同16日 安倍晋三首相は「完全な形での開催目指す」と宣言。
▽同19日 IOCバッハ会長が米紙インタビューで「違うシナリオを検討している」と答え、通常開催以外の可能性を示唆。
▽同20日 ノルウェー・オリンピック委員会が五輪の延期を求める文書をIOCに送付。各国が追随。米国の水連、陸連も延期を要望。
▽同22日 カナダのオリンピック委員会とパラリンピック委員会は、予定通り開催なら選手を送らないと宣言。
【大会組織委が発表した電話会談概要】
1 双方は、アスリート、IF(各国際競技連盟)、NOC(各国オリンピック委員会)等の意向に鑑み、大会中止が選択肢にはないことで一致しました。
2 その上で、双方は、アスリートおよび観客の安心、安全を確保することが最も重要であり、この観点から、現在の世界の状況が継続的に悪化していることに鑑み、予定通り本年7月に開催することは不可能であり、さらには年内に開催することも不可能であり、延期せざるを得ない旨一致しました。
3 上記の理解の下、双方は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会の実施に向けて、IOCと、東京2020組織委員会、政府、東京都をはじめ、内外の関係機関が一体となり、遅くとも2021年夏までの実施に向けて、具体的に検討していくことで一致しました。
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