追悼連載~「コービー激動の41年」その44 トレード画策で揺れ動く指揮官
2020年03月31日 09:17
バスケット
何もかもうまくいかないシーズンだった。「呪われたような感じだった」とジャクソンは振り返っている。2004年2月1日。トロントでのラプターズ戦終了後、今度はシャキール・オニールの「口」が暴れだした。
この試合で計55回の反則をコールした審判を「デビッド・スターン(当時のコミッショナー)はどうして営業がうまくいかないのかを考えることになる。ファンは高い金を払って選手のプレーを見に来ているんだ。なのにやつら(審判)がすべてを台無しにしている」と批判。スターンという人物を持ち出したことはとがめられなかったが“試合を台無しにしている”という部分の主語が審判になっていたことでオニールは処分された。そして2日にインディアナポリスで行われたペイサーズ戦は出場停止。今度はジャクソンが怒った。
「信じられない。罰金なら理解できる。だが出場停止とはどういうことなんだ。インディアナポリスを訪れるのは年に1回。なのに、こんなことでファンから楽しみをひとつ奪ってしまうのか?我々に対するリーグの嫌がらせのように思えて仕方がない」。すでに多くの難題を抱えていた2003~04年シーズンのレイカーズの指揮官には不満や怒りを備蓄できる「心の倉庫」がもうなかった。
ジャクソン監督はマイアミ市内のホテルの部屋にチームのまとめ役でもあったリック・フォックスと、ブライアントとは対立しているシャキール・オニールの2人を呼んだ。「もし今、私がコービーに休養するように命じたらどう思う?」。2人はブライアント派ではなかったが、休養という名の“追放”には困惑していた。実はこのとき、ジャクソンは暴言とおぼしき言葉を吐いたブライアントに対して「給料はもらえるが処分はするよ」と通告している。カプチャクにはその言葉の裏に「彼はもはやチームにポジティブな要素ではない。今後はもうチームメートの前で怒りちらすようなことはできない」という含みがあることも伝えていた。そしてチームの主力メンバーに自分の意思を示したのだった。
だがブライアント追放への動きはすぐに違った方向にねじ曲げられていく。オールスター・ゲーム直前の最後の試合となったロケッツ戦を目前にしてジャクソンがホテルでくつろいでいたところ、代理人のトッド・マスバーガーから電話がかかってきた。
「フィル、レイカーズがあなたとの契約延長の交渉を無期限で凍結すると公表するようだ」。
ジャクソンは困惑の表情を浮かべる。「なぜきょうなんだ?」。そこは遠征中のヒューストン。翌日になればロサンゼルスの自宅に戻っているのだからいくらでも対応ができるのに、不慣れな町では相談する相手も限られる。ジャクソンはカプチャクを恨んだ。ブライアントの追放プランを話してしまったカプチャクがジェリー・バス・オーナーへすぐにそれを報告してしまったと思った。確かにオフレコではなかったので、オーナー室に飛び込まれても“反則”ではない。ジャクソンはメンタル面で指導を受けていたセラピストから「ミッチ(カプチャク)を軽く見すぎていたようですね」と急展開に至った直接的な原因を指摘された。(敬称略・続く)
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には一昨年まで8年連続で出場。フルマラソンの自己ベストは2013年東京マラソンの4時間16分。昨年の北九州マラソンは4時間47分で完走。
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