リーグワン佳境、クボタSO岸岡智樹の飽くなき「成長マインドセット」プレーにもラグビー教室にも情熱
2022年05月02日 12:30
ラグビー
そう考え、昨年、入社2年目ながら、オフシーズンの社業が休みの日に、会社の了解を得て全国6カ所で教室を開催した。痛感したのは、分かっていたはずの地域差だ。技術の差に戸惑ったのではない。「ラグビーに対する温度差が大きかった。関東や大阪は、すぐに募集した枠が埋まったが、ラグビーが盛んでない地域はなかなか埋まらなかった」。親や指導者たちの情報交換が、活発にされる土壌が、あるかないかの差だと、感じだ。
だが、実際足を運ぶと、「熱」がないわけではなかった。むしろ、関係者から献身的なサポートを受けた。さらに、「ラグビー教室のこんな展開の方法もあるのでは?」と、様々なアイデアも授けられた。
分かった。
ニーズがないのではない。むしろ、ラグビー教室は、必要とされている。ただ、水面を揺らす水滴がなかっただけで、一滴落ちれば、波紋は広がると確信した。
今年も全国で、昨年と同様に基礎にこだわる。120分のうち90分はキャッチング、パスなどに取り組む。子どもたちが飽きないよう、練習内容を工夫しながら、基本技術の習得に励む。ワールドクラスの選手は、凡事徹底を怠らないことを知っているからこそ、基礎を大事にするのだ。
今年は、未来の指導者育成も試みる。高校生、大学生に、コーチでの参加を呼びかける。母校の東海大仰星高校では、地域の小中学生にラグビー教室を開き、高校生が指導にあたる取り組みがあった。「人に伝える難しさを学び、同時に、伝わった時の快感を学んだ」という自身の経験を、味わってほしいと考えている。昨年の福島県での教室では、勿来工のラグビー部員が手伝ってくれた。コーチングとレッスンの運営に触れることで、社会勉強にもなるとイメージしている。
さて、実質2年目を迎えた“本業”は、「チームに貢献できているかというとそうは思えない」と冷静に自己分析をする。10試合に出た昨季は「何も考えず突っ込んだ結果、通ずる部分があったと」と自信をつかんだ。ところが、2年目になると周囲の要求は高くなり「一か八かのプレーではなく、高いレベルの再現性を求められる。(オーストラリア代表で活躍した)フォーリーが出ない時に、いかに彼のように自分色を出しながらチームを引っ張れるか。それが求められている」と、課題を感じている。2位に付け、リーグワン初代王者へ突き進むチームで、ここまで7試合に出場しているものの、高校、大学(早大)で日本一を経験した司令塔は、現状のままではダメだと危機感を抱く。レベルアップへ、必死だ。
近年、スポーツ関連の書籍には「成長マインドセット」という言葉がよく使われる。ビジネス業界でも頻繁に見る用語で、自分の可能性を信じて能力やスキルの開発に取り組む姿勢があれば、個人や組織にいい影響を与えるとされている。高い「成長マインドセット」で競技にも、ラグビー普及にも取り組み岸岡には、何かを動かす力がある。(記者コラム・倉世古 洋平)
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