海外で学べることはまだ一杯あるわ 貴重な経験を一生の財産にせんかったらウソやで

2024年05月22日 17:30

アメフト

海外で学べることはまだ一杯あるわ 貴重な経験を一生の財産にせんかったらウソやで
鳥内秀晃氏 Photo By スポニチ
 【名将・鳥内秀晃の人間話 頼むでホンマ】関学大アメフト部のアメリカ遠征(5月1日~7日)に、オレも現地で合流して、ゲームを観戦してきたわ。大学を卒業後、アメリカでコーチ留学した4シーズン中、3シーズン過ごしたのがサザンオレゴン大。ホンマは監督を退任するタイミング(2020年)で向こうへ行く予定やったけど、コロナ禍があって、やっと今回実現できたわ。当時一緒にやっていたメンバーが集まってね。オレにとっては、同窓会みたいな感じで楽しかったな。
 ゲームは24―54で負けたわ。アメリカの選手は練習とかではリラックスしているような感じやのに、試合直前には一気に戦闘モードになって。1プレーに対する集中力とか、ボールへの執着心など見習うべき点は多いな。一つ残念やったのは、天気やな。オレゴン州は4月上旬から9月半ばまで、ずっと気候がいいのに、その時だけ冬に逆戻りしたような感じになって。地元の人が「この時期、山に雪が積もっているのを初めて見た」って言うくらいやったわ。試合の日は、横殴りの雨が降ったり、台風みたいな風が吹いたり、気温5度なんて、想像もせんかったな。

 そんな天気にもかかわらず、カナダのバンクーバー、シアトル、ポートランド、サンフランシスコ、ロサンゼルス、ボストン、シカゴからも、関学大の同窓生の人が応援に来てくれてね。寒くて前半だけで引き上げた人もいはったみたいやけど、ありがたかったな。うちの学校は甲子園ボウルでもたくさんスタジアムに来てくれはるし、どこへ行っても「今年のチームはどうですか」って声を掛けてもらえる。そういう文化が根づいているやろな。

 今回みたいに、悪天候の中、足を運んでくれた人の姿を見たら、選手も感じることが多いはずや。寒くて震える思いでスタンドから応援してくれてる人の前で、恥ずかしいプレーなんかできひんで。声援が勝利への執念を生んでくれるわけやし、どこで試合しても会場に来てくれる人がいるのを肌で感じたんは、ええことやったと思うで。

 試合の前日には、平和学習の時間もあって、現地に住んではる広島原爆の被爆者の方の話を聞く機会があったわ。サザンオレゴン大が日本に遠征に来た時は、広島の原爆資料館にも行ってて、約40年前の時にオレも初めて訪れたわ。歴史って、日本人なら日本人、アメリカ人ならアメリカ人の立場からしか話を聞かへんやん。そういう意味では、うちの学生だけやのうて、アメリカの大学生が被爆者の話を聞くのは貴重な体験やったんちゃうかな。

 滞在中、選手には事あるごとに「一生付き合っていけるように、今回知り合った選手と連絡先を交換するような仲になっとけよ」と言うとってね。オレも留学していた時の関係は未だに続いているし、この7、8年の間にも、当時のコーチや選手が3人くらい大阪へ遊びに来てるわ。彼らにとっても、将来ビジネスでつながりができるかも分からんやん。「縁」は大事にせなあかん。

 海外へ行くと、いろいろ学ぶことも多いけど、円安などで、そういう機会が減ってきてるのが寂しいわ。そこは指導者が頑張って、いろんなアイディアを出していかんと、アスリートの成長につながっていかへんで。頼むわ、ホンマ。(関西学院大アメリカンフットボール部前監督)

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