【ブレイキン】SHIGEKIX 姉と師匠が語るダンス人生秘話「センスに頼らない努力の天才」
2024年07月04日 04:40
ブレイキン
ブレイキンは音楽との調和、技の多彩さや切れに加え、独自性や表現力も問われる。SHIGEKIXは幼少時代から芸術的な感性が高かった。今も趣味で絵を描き、個展のオファーが届くほどの腕前。AYANEは「重幸はダンスをしていなくてもアーティスト系の仕事に就いていたと思う。私は絵心ゼロ。私が母のおなかに置いてきた芸術的センスを重幸が全部持ってきた感じ」と笑う。
AYANEも2月の全日本選手権で準優勝するなど第一線で活躍する。姉弟の原点はストリートダンスの聖地、OCAT(大阪市浪速区)地下1階のポンテ広場。2人がダンスを始めてから東京に拠点を移すまで10年以上、ほぼ毎日通った。自宅から車で約1時間。両親に交代で送ってもらった。学生時代に父はバンド活動、母はディスコ通いと、ともに音楽好き。移動の車中では多様な曲が流れ、音感が培われた。
広場のダンサーは社会人が多く、皆が集まるのは午後8時過ぎ。半井姉弟も大人に交じり、日付が変わるまで踊った。聖地には「タバコは吸わない」「お酒は飲まない」「ゴミは持ち帰る」など受け継がれてきた場所を守るために仲間で決めたルールがある。姉弟は先輩から「ワンステップ、ワンラブ。踊れることに感謝し、一歩に愛を込めよう」と教えられた。10歳以上離れた仲間たちにつけられたSHIGEKIXの愛称は「小さいおじさん」。落ち着き払った言動から命名された。
ダンス人生を変えたバトルがある。9歳だった11年10月、大阪府内で開催されたイベント。SHIGEKIXはハワイの天才キッズとして世界的に有名だった同い年のリル・デーモンと初めて顔を合わせ、エキシビションマッチで敗れた。SHIGEKIXが初めて通ったレッスンで講師を務めたKAZUHIROが13年前を回想する。「負けた次の週からレッスンを受ける姿勢が明らかに変わった。それまで集中力が続かず、レッスン中に寝ることもあったが、意欲的に取り組むようになった」。デーモンには14年にパリ近郊で開催された12歳以下の大会で再戦して雪辱した。
21年には、世界大会で当時39歳のフリーロックと対戦した。技の種類や切れなど技術では完全に上回ったが、コミカルな動きを取り入れた独特のムーブで会場の雰囲気を味方につけた大御所に敗れた。KAZUHIROは「どうすればあの雰囲気が身につけられますか?」と相談され「ヒップホップカルチャーの歴史を学ばないと、あの雰囲気は出ない」とアドバイスした。
ブレイキンには大きく分けてスポーツ系とカルチャー系の2種類の大会がある。カルチャー系には五輪種目への採用に懐疑的なダンサーも多い。SHIGEKIXはスポーツ系の象徴的な立場だが、恩師の助言もありカルチャー系の大会に積極参戦。ブレイキンが生まれた80年代の音楽や、読書を通して知識を深めていった。
KAZUHIROは「カルチャーのにおいがプンプンする雰囲気は短期間では身につかない。シゲも少しずつ雰囲気が出てきている」と目を細める。AYANEは「重幸は努力の天才。センスに頼らず、究極を突き詰められる。練習量は誰よりも多い」と言う。ダンスに育てられたSHIGEKIXにとってパリはブレイキンへの愛と感謝を表現する舞台。磨き上げたムーブに魂を込める。
◇半井 重幸(なからい・しげゆき)2002年(平14)3月11日生まれ、大阪府大阪狭山市出身の22歳。7歳でブレイキンを始め、11歳から世界大会に挑戦。18年のユース五輪で銅メダルを獲得した。世界選手権は22年銀、23年銅。ダンサー名はUHA味覚糖の商品に由来。特技は幼稚園から小4まで打ち込んだトランポリン。身長1メートル66、体重58キロ、体脂肪率7%。
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