熊本出身の阪神・岩貞 凱旋登板へ胸中語る「感謝の気持ち持って投げたい」

2018年07月13日 09:00

野球

熊本出身の阪神・岩貞 凱旋登板へ胸中語る「感謝の気持ち持って投げたい」
阪神・岩貞(撮影・成瀬 徹) Photo By スポニチ
 「マイナビオールスターゲーム2018」に監督推薦で選出され、14日に熊本での第2戦で凱旋登板を予定する阪神・岩貞祐太投手(26)がスポニチ本紙の独占インタビューに応じた。熊本地震からの復興を目指す故郷への思い、そして、高校3年夏以来となる藤崎台県営野球場のマウンドに上がる心境などを明かした。(聞き手・遠藤 礼)
 ――地元・熊本の藤崎台県営野球場での球宴開催は感慨深い。

 「藤崎台に行くのは高校3年の夏に負けて以来です。県大会の準決勝で熊本工業と対戦して0―3で完投負けしました。それから、行ったこともなかったので本当に久々になりますね」

 ――高校最後の試合となった悔しさが刻まれている。

 「悔しさもありましたけど、その前日も秀岳館との試合で8回か9回まで投げていて。連投というのもあって、負けて悔しいより“あぁ終わった”という疲れの方が先に来てましたね。甲子園の夢がついえたというより、逆に達成感がありましたね」

 ――なじみ深い球場になる。

 「実は自分の中でピッチャーをスタートさせたのが藤崎台なんです。それまでは野手で、高校2年でピッチャーを始めて、初めて公式戦を投げたのが、あのマウンドでした」

 ――プロとして凱旋できる。

 「まずオールスターが熊本で開催されることにびっくりして…。出られたらという気持ちでいたのでうれしいの一言。恩返しという意味合いも込めて、いろんな人を招待してます。タイガースのユニホームを着て、自分がピッチャーを始めたマウンドでプロとして投げられる姿を熊本のお世話になった方々に見せられるのは本当にうれしいです」

 ――必由館の恩師・西田尚巳監督にも恩返しになる。

 「春先からずっと“オールスター期待してるぞ”とメールが来ていたので。開幕ローテに入れなかった時点で諦めてはいたんですけど、何とか成績でちょっとアピールできて、緒方監督に選んでもらって、西田監督に投げている姿を見せられるのは良かったです」

 ――西田監督の存在は大きい。

 「高校に入る時も野球やるかどうか悩んでいた時に西田監督に声をかけていただいたので。最初は野手をしていて、自分の代に左投手がいないのもあって途中で“ピッチャーやらないなら辞めろ”と言われて。そこから半強制的にピッチャーをやらされて(笑い)。その時は嫌で仕方なかったですけど、今となってはこうやって野球で飯を食えてるのも西田さんのおかげなんで」

 ――結果にもこだわる。

 「ピッチャーとして打たれるつもりで投げる人はいないですし、堂々と勝つ、抑えるところを見せたい」

 ――被災地での球宴になる。

 「地震で球場もだいぶ被害を受けて、取り壊すような話も聞いていたので。そこから球宴が開催されるまでになったのは、本当にうれしいです。感謝の気持ちを持って投げたいです」

 ――改めて熊本地震が起こった時の心境は。

 「心配というか、どうなってしまうんだろうという気持ちばっかりだった。今はそんなに気持ちの変化はないけど、決して元通りにはならないとは思うので、より元の生活に近い状態になれればと思っています」

 ――地震発生の第一報は。

 「遠征で名古屋にいる時に地震速報があって、すぐに弟に電話したんですけど、“大変でそれどころじゃない”と最初は電話を切られて…。かなり食器とかも割れて、2日後に本震が来た時はもうどうしようもなくて、家族は車中泊もしていました。心配どころじゃなく、とにかく熊本に帰りたかったですね」

 ――2日後には1軍での先発が控えていた。

 「投げる直前まで携帯を見ていて家族と連絡を取り合って。試合30分前のブルペンでも集中できていなくて。ベンチに入る10分前ぐらいに、ようやく集中して投げないとと思った。それも自分がその年初めてローテに入っていたから頑張ろうとかは全く思っていなくて。試合に向けてスコアラーさんがデータ取ってくれて、ミーティングもしてくれて、野手も準備している中で自分の私情で一つのゲームを落とすのは絶対にやってはいけないと思って。マウンドに上がったら集中しようと思って腕を振りましたね」

 ――関西から被災地の情報収集はどのように。

 「携帯もそうですけど、テレビのニュースでも被災地の様子としてリポートされる場所も全部、家の近くだったので。ここ、どこだろうと。知っている場所なのに、あれ?って。道は知ってるけど、景色は変わってるなというのばかりでした。僕らが住んでいる町の一番にぎわっている建物も倒壊していたので…」

 ――次第に支援の気持ちも沸いてきた。

 「被災地に行けないなら何ができるだろうと考えて。自分の家族より親戚の方たちが大変だったので、大型量販店に行って店の人が驚くぐらい支援物資を買って送りました」

 ――チームメートも寄せ書きの色紙を被災地に送ってくれた。

 「僕の通っていた小学校が避難所になっていたので。プロ野球は人気のスポーツですし、阪神の主力の人にそういうことをやってもらうと元気がもらえるんじゃないかと思ってお願いしました」

 ――2年たって被災地の現状は。

 「差ができてるなと。復興してるところはしてますけど、そうでないところの手つかず具合というか。仕方ないことなんですけど。やっぱり元通りになるんじゃないかという思いで見てしまうので。そこの人たちが新しく家を建てて生活してることもあると思いますが、元の姿と照らし合わせると、変わった部分が大きいですね」

 ――球宴出場は16年以来2度目。

 「自分が出ることに違和感があるので勘違いしないように。現実を見て。出たというより、出させてもらったと考えるようにしています。こういう時こそ地に足をつけてやりたい。逆に怖い舞台ではあるなと思いますね」

 ――前回出場時に得たものは。

 「マウンドに上がった時にファンの垣根を越えて他球団の選手の応援が聞こえてきて、どれだけファンが野球のことを好きかが伝わりましたね」

 ――他球団で顔を合わせるのが楽しみな選手は。

 「大瀬良とか山川は大学の時から一緒にやってきた仲間なので。大きな舞台で一緒にユニホームを着られるのはうれしいですね。2人とは大学時代も年末に集まって食事したりしていたので。山川もわざわざ沖縄から出てきてくれたりしました。お土産を大量に持って(笑い)」

 ――今年は開幕2軍から3勝(4敗)、防御率1・73の好成績。

 「春先は調子が落ちている中で、これで開幕1軍に入っても…と不安な部分もあったので、2軍に落ちて自分の感覚が戻った上で自信を持って上がってこられた。ただ、自分の成績はそれなりに出ていますけど、勝ちにはつながっていないので。チームが勝てばうれしいんですけど、やっぱり自分みたいな立場の人間は勝ち星がモチベーションにもなりますし。どんどん、勝ち星をたぐり寄せていきたい」

 ――後半戦へ向けて。

 「規定投球回に乗せていかないことには、先発投手としての価値がないと思うので、そこを最低目標に置いて。広島とのゲーム差があるので、先を見ずに目の前の1試合に集中して、チームを勝たせる投球をしていきたいです」

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