平成最初のV投手“帝京魂”吉岡雄二氏が語る頂の景色
2018年07月31日 09:30
野球
「スタンドの6、7割が仙台育英の応援だった。僕らは三塁側ベンチだったけれど、その近くまで仙台育英を応援している人たちだった」
帝京にとっても初優勝を懸けた一戦だったが、世間の関心は深紅の大旗が白河の関を越えるか。東北勢が悲願の全国制覇を成し遂げるかが注目だった。
「大越の方が強豪校を倒して勝ち上がってきた。しかも、一人で投げ抜いていた。大越の方が注目されていて、大変だったんじゃないかな」
それでも負けられない理由は、吉岡にもあった。優勝候補と期待されながら、春のセンバツは報徳学園に初戦敗退。冬に右肩を故障し、本来の投球ができなかった。試合後、宿舎に戻って号泣する仲間を見て、「自分のふがいない投球で負けた。甲子園は自分だけのことじゃない。夏はみんなにいい思いをさせたい」と誓った。
仙台育英のエース大越との投げ合いは、息詰まる展開となった。0―0のまま、延長戦に突入。そして10回に鹿野の中前打でついに2点を奪った。「これでいけると思った」。最後の126球目はこん身の直球だった。
計5試合で41回を投げてわずか1失点。打っても2本塁打をマークしたが、「決勝は投げる方に100%と決めていた。打つ方はみんなに任せていた」と、大会3度目の完封劇で春の雪辱を飾った。
当時のスポニチ1面は、両手を突き上げた吉岡の写真を掲載している。「最後は三振をとりたいと思っていた。これは素直な反応ですね」と懐かしそうに笑った。
大会前に左足首を捻挫しながら優勝できた。今だから分かることもある。この大会の帝京は第1試合が多かった。「当時は朝起きるのが嫌だなと思ったが、あとから考えると違う。試合は暑くなる前に終わったし、体力の消耗が違った」。事実、秋田経法大付(現明桜)との準決勝を2安打完封した直後も「体に余力が残っていた。決勝も勝てると思っていた」と振り返る。
29年前、元号は昭和から平成となった。「あの頃は平成になったとか気にしなかったなあ…」。当時の仲間とは、年1度のペースで今も集まるという。(敬称略)
◆吉岡 雄二(よしおか・ゆうじ)1971年(昭46)7月29日生まれ、東京都出身の47歳。帝京から89年ドラフト3位で巨人に入団し、4年目に打者転向。97年近鉄に移籍し、楽天、メキシカンリーグでもプレー。引退後は独立リーグで監督、コーチを務め、バラエティー番組で帝京先輩であるとんねるずの石橋貴明と「リアル野球BAN」で共演。今季から日本ハム2軍打撃コーチ。高校通算51本塁打。プロ通算131本塁打。1メートル89、103キロ。右投げ右打ち。
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