甲子園ファン2000人乱入――下駄で襲われた3冠王・王貞治
2020年04月12日 09:00
野球
貫徹したリーグ9連覇。
その裏でON時代は
最終章を迎えようとしていた。
73年10月22日の甲子園球場は
異様な興奮に包まれた。
巨人、阪神、勝者が優勝の
シーズン最終戦なのだ。
無理もない。
巨人は長嶋茂雄を欠いていた。
10月11日の同戦(後楽園)で
右手薬指を骨折。
遠征メンバーからも外れた。
V9最後の試練となった試合は、
その年3冠王の王貞治を中心に奮起し、
9―0の圧勝。
0・5ゲーム差で猛虎を振り切った。
ところが、熱戦には第2幕があった。
優勝決定の直後、
暴徒と化した阪神ファンが
神聖なグラウンドになだれ込んだ。
その数約2000人。
制止する警察官にタックル。
ついにはベンチ前の王も
下駄で襲われた。
おかげで、川上哲治の胴上げは
宿舎の大広間で行われた。
余勢を駆った巨人は
日本シリーズでも
野村克也率いる南海を撃破。
9年連続日本一を成し遂げたが、
翌74年は中日に優勝を奪われる。
そして長嶋は現役を引退した。
(敬称略)
《1973年10月22日 宿舎に戻り川上監督胴上げ》試合後のファン乱入のシーンは1面に詳細が記されている。午後4時19分。試合終了と同時に起きた様子を「もう、紙吹雪も花火もなかった。どっとグラウンドになだれ込むファン、脱兎(と)のごとくベンチへ逃げ帰る巨人ナイン」と記した。グラウンドになだれ込んだ数は2000人。芦屋の宿舎での畳の上の胴上げでは、低い天井にアタマが届きそうになるまで舞った川上監督の様子も掲載。さらに、ヤクルト監督の三原脩氏が退団を表明した。10・22は激動の一日となった。
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